「絵美子!絵美子!!」
秀之がステンレスの扉を力任せに叩く…拳に血が滲むが、僅かに凹みが付くのみでビクともしない
「うるせえなあ…誰だよ全く」
「勇…聞こえるか?」
十三が問い掛けた 勇の動きが止まる
「おう、十三か お前もこのメスガキにツッコミに来たのか?昔みてえによう?」
十三の口内に血の味が拡がる…己の過去を振り返り、歯をくいしばっていた
「昔の話だ…裕美子の娘に手を出したら、勇…殺すぞ」
鉈を持つ手が、本気の殺気を放っていた
「あ?ああ、このガキ、昔やりそこなった女の娘か?道理で見覚えが有ったんだよ…あの時やりそこなった借りを、ガキに返して貰うとするか…こりゃ傑作だ!」
秀之の両拳が血に染まって行く…声にならない絶叫が、展望場に響く
「勇、止めるんだ」
「もう遅せえよ、バーカ」
勇の身体が絵美子にのし掛かり、赤黒く怒張した陰茎が一文字に閉じた絵美子の中心部を押し分け、根元まで突き刺さった
ハッ ハッ っと、勇のリズミカルな息遣いだけが、トイレ内に響いている 展望場の絶叫は止まらない
ガチャリ… ステンレスの扉の鍵が、開いた
虚ろな目付きでタバコをくわえ、だらりと垂れた陰茎を隠すことも無く、勇が立っていた 陰茎には、破瓜の証しがべったりと塗れている
「なあ、十三、お前も昔はこうだったろう?あの女共と、このガキに 何の違いが有る?」
勇を突き飛ばし、秀之が絵美子に駆け寄って行く
「オレは、オレがやりたいように生きてるだけだ…その辺を歩いてる奴らだって、一皮剥けばおんなじさ…誤魔化しながら生きたって、面白くねえ、そうだろう?ヒヒッ」
「勇…」
次の瞬間、十三の右腕が振り上がり、鉈が振るわれた 肩口にぶち当たり、鎖骨にめり込む
「ヒヒッ…ヒヒヒッ…そうだよ、その目だよ 善人ぶった所で、人間なんて変わらねえんだ」
もう一閃、今度は首元に鉈が振るわれた
「そうだな…オレもお前も、同じ種類の人間だよ…」
「ヒデ…オレの車で早く病院連れて行け、中央病院の院長は幼馴染みだ、オレから上手く言っておくから、早く」
「十三…さん…」
「ここから先は、ヒデは知らない方が良い…ここで有ったことは誰にも言うな…裕美子にも小僧にも、な」
そう告げると、十三は車内に戻り、山中の測量時にも使える衛星回線の携帯電話を取り出して 電話をかけ始めた
「ああ、十三だ…掃除屋の手配、頼む…」
「十三、これで三人目、か?」
麓の幹線道路沿いに有る 車の解体工場、プレス機の操作ブース内で、土木建設会社の専務、康男が問い掛けた
「仕方無いだろう…裕美子の為ならどんなに汚れようと、構わない…そう決めたんだからな…」
「勇…成仏しろよ」
康男がプレスされた鉄塊に 手を合わせていた…
※元投稿はこちら >>