ワンボックスを走らせ 山道を登りきると、開けた場所に出た
無人では有るが周囲の眺望が望める様に整備され、駐車場も広い 夏の夜などは絶好のデートスポットだが あまり知られていないのか地元の人間でも滅多に来ず、周囲は閑散としている
「出ろ」
勇がスライドドアを開け、絵美子を引き摺り下ろした 絵美子は涙と鼻水、鼻血でグチャグチャの顔を俯かせ、裸足で降り立った
「来い」
勇は駐車場の外れにポツンと建てられた公衆トイレに、絵美子を引き込む ステンレスの吊り扉には車椅子マークが貼られており、トイレの中は以外と広い
俯いたままの絵美子の頭を掴み、顔を上げさせる
「酷い面だな…これじゃ楽しめねえから洗え」
絵美子は黙って洗面台の前に立ったが 両手を後ろに拘束されている為に蛇口に触れない…
「仕方無えなあ、顔も洗え無えのか」
勇の口の端が歪み、絵美子に近付くと 絵美子の頭を洗面台に押さえ付け、頭からジャブジャブと水を流し始めた
「!!…!」
口をテープで塞がれ、頭から水を掛けられ、呼吸が出来なかった ジタバタと暴れるが勇に横腹を殴られ、その場に倒れ込む
「悪い 悪い これじゃ死んじまうなあ」
テープをピリッと剥がした 絵美子がゼェハァと咳き込みながら、荒く息を整えている
「誰、ですか?帰して下さい…」
絵美子が泣きながら懇願する
「用事が済んだら、な」
股間がパンパンに張り詰めたズボンのチャックを下ろしながら、ぺろりと上唇を舐め上げた…
(?…康男の会社の車……勇?)
十三が養鱒場に下見をしに車を走らせていると、白いワンボックスカーとすれ違った 運転していたのは、あの勇だ
(この先は展望場しか無い筈だぞ?)
胸騒ぎが十三を襲う
養鱒場を通り過ぎ、そのまま麓の建設会社に向かおうとした矢先、秀之とかち合った
「十三さん、絵美子見なかったか?」
秀之と裕美子、自分も狼狽していた マキは絵美子が消えたことにショックを受け、茫然としている
「いや、見てない…絵美子がどうかしたのか?」
「今さっき、絵美子が居なくなったんだ…上には行って無いのか…」
秀之の表情が強張り、裕美子は狼狽えている
「待て、ヒデ…さっき一台上に行く車を見た…もしかすると、勇の野郎…」
「?」
「ヒデ、乗れ」
十三は車をUターンさせると、秀之に助手席に乗るよう促した
「タカ、あの子、家まで送ってやってくれないか?裕美子はそこで待ってろ」
それだけ言うと、秀之は十三の車に乗り込み、山道を上がって行った タイヤは白煙を撒き、アスファルトにはブラックマークが付いていた
「裕美子さん…落ち着いて、すぐ戻りますから」
「絵美…絵美子…」
裕美子は顔面を蒼白させ、膝を震わせていた
「じゃ、マキちゃん…絵美子はきっと見つかるから、心配しないでお帰り」
「タカさん、絵美に何か有ったらアタシのせい、アタシが悪いの…アタシが悪戯を思い付かなければこんな…」
「大丈夫、心配ない…また明日、学校で会えるよ」
マキを家まで送り、山道に向かう
(十三さん、何か心当たりが有りそうだったな…)
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