「なんだ?大欠伸なんかして 寝不足か?」
数メートル先の秀之が、四本継ぎの渓流用ルアー竿を組み立てながら話かけてきた 今朝は朝靄が酷く、沢を覆う様に繁る木々が綿を纏ったように見える
「あの、昨晩 絵美子ちゃんが食堂に来まして…これ…」
「お、DT3号じゃないか…何でタカが持ってるんだ?」
「DT3号?って何ですか?」
「電動タカ3号だよ…傑作だぞ?」
秀之の凝り性に半ば呆れながら、昨晩の経緯を正直に話した 実子に勃起してしまったことは流石に伏せたが…
「んー、絵美子も、もうそういう年頃か…」
「師匠、裕美子さんと仲良いのは分かりますが、もう少し気を使った方が良いですよ…」
「分かった…ま、その話は後だ、お先っ」
人の話を遮り、秀之がメバル釣りなどで使用する飛ばし浮子をキャストしていた 使えると思う道具は、どんな釣りのジャンルだろうと垣根無く使う、秀之らしい釣り方だ
「ほら、ヒット」
軽量の仕掛けやルアーを遠方に届かせる為の飛ばし浮子、その先には毛鉤が括られている
「師匠、汚い、やり口が汚い」
「あ?馬鹿お前、引き出しが多いと言え」
結局、三匹 対 0匹で完敗してしまった 時刻は七時前、そろそろ絵美子を送る時間だ
※元投稿はこちら >>