「…康男、何故 勇を雇った?」
十三が土木屋の専務、幼馴染みの康男に問い掛けた 康男もまた十三とは悪さばかりしていたが、社長である兄に性根を叩き治されて 今では兄弟で三十人規模の会社を経営する程になっていた
「人が居ないんだよ、それに昔からの縁が有るしなあ」
「奴の噂は知ってるだろう?」
「十三、それはお互い様って奴じゃないか?」
それ以上は何も言えなかった 十三とて脛に傷持つ身の上だ
「勇だって、地元じゃそう悪さはしないだろ…じゃ、養鱒場の話は後で菓子折り持って村役場で詰めてくる 十三、測量の方はお前の所使うから、見積りだけしといてくれ」
「じゃ、行ってくる」
午後の授業が終わり、下校の時間に合わせて秀之が絵美子を迎えに麓へ軽トラを走らせて行った 食堂を手伝う代わりに寝食を提供され、朝夕のマヅメ時だけ、沢に出て釣りをするのが ここでの自分の過ごし方だった だが最近では、帰ってきた絵美子が沢にやって来ては話し相手をさせるのであまり釣りに集中出来ていなかった
「タカちゃん、朝の続き…」
裕美子がまたしても誘って来るが、聞こえないフリをして早歩きで入渓する 裕美子は魅力的だが、同じ様に渓魚達も美しく、自分を魅了していた
「ん、もう…主人もタカちゃんも釣り馬鹿なんだから」
裕美子は 仕事着の合わせから自身の胸を揉みしだきながら、独り、腰を捩らせていた
※元投稿はこちら >>