土木屋の事務所は街の外れ、幹線道路沿いに有った 鉄板の仮囲いで敷地を囲み、中には資材やダンプ、ユンボなどが並んでいる 三階建てコンクリート造の社屋の他に、作業員が寝泊まりする為の二階建てのプレハブ小屋が五つ程建てられている
道路を挟んだ向かいは、絵美子が通う中学校だった
「専務居るか?」
十三は一階の事務所を訪れ、社長の愛人兼、事務員に声を掛けた
「上で打ち合わせしてます」
歳の頃は裕美子と同じ、四十路手前程だろうか、きついパーマを当て、狸のような丸顔に強めのメイクをしている 事務服のブラウスから溢れんばかりの巨乳を強調するかのようにボタンを胸元まで外し、下着がチラチラと覗いていた 元は地方のホステスだったが、社長に拾われたという噂だ
「じゃあ、少し待たせて貰うぞ」
十三はそう事務員に告げ、資材置き場横の自動販売機にコーヒーを買いに出た 仕事の話を持ってきたというのに、茶のひとつも出さない、気の効かない女だ
資材置き場から人の声が聞こえた
「そろそろ一服するか」
山積みのパイプ類から男が二人、現れた
「!」
十三は自動販売機の陰にそっと身を隠した
(あいつ…裟場に出て来たのか…)
一人は髪を金髪に染めた若者、もう一人は五十路半ば程だろうか、白髪混じりのオールバックに狐目の狡猾そうな顔付きをしている 十三はその男に見覚えが有った
(昔、裕美子を襲った男、勇の野郎だ…)
若い頃、十三は勇とつるんで非道なことばかりしていた 裕美子を襲う計画を立てたのも勇で、当時既に裕美子に心酔していた十三は
襲う相手が裕美子だと直前に知り、裕美子に覆い被さる勇を引き剥がして裕美子を逃がしていた
「十三、久し振りだな」
勇が十三に声を掛けた
「あ、ああ…いつ出てきた?」
「先月さ…あの女が黙ってさえ居りゃ、捕まることも無かったのによ…ツイてねえな全く」
十三と仲違いした勇は全国を転々とし、土地土地で強姦や窃盗を繰り返す日々を送っていた 前科は既に五犯、全部窃盗と強姦だ
「またこっちでしばらく仕事するからよ、宜しくな」
そう十三に告げると、勇は向かいの中学校に目を向けた
「最近のガキは発育が良いなあ、おい」
勇は下卑た笑みを溢しながら、上唇をペロリと舐め上げていた
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