「今から魚の買い付けに行くから、タカも来い」
村営の養鱒場では虹鱒や岩魚、山乙女など様々な川魚を養殖していた 焼き物などだけでは無く、養殖の川魚には寄生虫が居ないので刺身にも出来る
「生け簀に移す間、釣りでもするか?」
秀之は併設の釣り堀へと歩いて行く 受付のプレハブ小屋に居た初老の男に挨拶もせず、貸し竿を二本掴むと椅子替わりの空のビールケースにどかりと腰を下ろした
「ヒデさん、お金とか払わなくて良いんですか?」
「ジジイが店に来た時に借りは返すさ」
秀之は空の手で酒を飲む仕草を見せた
「それで、さっきの話、どうする?…」
「なあ、タカ、ちょっと型を採らせてくれないか?」
「?」
昼時を過ぎ、手巻きタバコを吹かしながら秀之が問いかけていた
「タカのお陰で、あの癖は治まった…二人とも感謝しているよ…でも困ったことに、なあ」
秀之はチラと裕美子に目配せした 裕美子の顔がみるみる赤く染まっていく
「あのグリップじゃ、裕美子が満足出来ないんだよ…」
秀之の話では、布袋竹で出来た異形の男性器や、様々な大人の玩具を試したがどれも今一しっくり来ない、一度知ってしまったタカの感触が忘れられないと、裕美子が不満を募らせているらしい
「でもな、他の男には抱かせたくないんだよ…分かるか?」
「え?じゃあ、型を採るって…」
「そうだよ?他に何が有るんだよ」
秀之と裕美子を交互に見る 変態だ、やっぱり変態夫婦だ…
「タカちゃんのせいなんだから、責任、取ってね?」
真っ赤な顔で、裕美子が呟いた
「そういえばさっき、責任は取るって言ってたよな、なあ」
釣糸を垂れ、玉浮子を眺めながら秀之が呟いた
「俺はな、裕美子の望むことなら、何でも叶えてやりたいんだよ…」
ふと水面に目をやると、秀之が投げ込んでいる玉浮子が、クンクンと水中に引き込まれていた
「!」
パシッ と竿を跳ね上げ、合わせを入れる
「よし、三匹目」
「ヒデさん、どうせ自分を帰す気、無いんでしょ?」
秀之はニヤリと笑いながら口を開いた
「よし、戻るか」
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