「・・何かあった?」
「うーん・・あったと言えばあったし・・無かったと言えば無かった・・かな・・。」
「ふーん?」
狐に摘まれたような夫。
二人は剥き出しの下腹部を、しかも性交の残滓をこびりつかせたまま絡ませながら話し続ける。
猛るペニスに掻き回されてグチャグチャにされた下腹部の内臓が、ゆっくりと復元していく錯覚に酔い痴れるサクラ。
これこれ・・これがしたかった・・。
ずっと・・したかった・・の・・。
「でも、びっくりした・・」
ずっと・・避けられてると思ってた・・。
サクラの髪を撫でながら夫は漏らす。
え?
ちょ・・ちょっと待って・・。
・・それ・・は・・何故?
「十年ちょっと前、かな・・」
深夜、夫婦としての行為に及んでいた二人。
充分に解ぐされたサクラ自身に挿入しようとした夫。
だが、しかし。
体調の為か、それとも他の原因があったのか。
いずれにせよ、夫の牡は沈黙を守る。
勃たなかったのだ。
萎えたまま、だ・・。
焦る夫。
傷付き、落胆したサクラの表情。
「あの時のサクラ・・見てられなかった・・」
俺が悪かったのに・・
無理して笑って・・
「覚えてないの?」
「・・全然・・。」
マジか・・。
呆然とする二人。
だが、どちらともなく二人は笑い始める。
くつくつ、と鍋に湯が沸くように二人は笑う。
面白いのでも愉快なのでもない。
互いに互いが、そして自分自身が限りなく滑稽であった。
滑稽、、それは哀しみ、そして切なさが伴う。
「「・・損した・・ね。」」
奇しくも夫婦は同じ結論を同時に口にする。
十年を無為に費やしてしまった・・。
だが、ナナとの出会いがサクラを変えた。
本人が負けたと思わない限り負けではない。
そして、どんなピンチでも自分を信じるのだ。
『後は・・勇気だけだ。』
「・・ヤろう・・よ・・。」
サクラは呟く。
十年分・・ヤりまくろう・・よ。
「・・十年分?」
週に一回として年間で約百回、十年で約千回。
今日、既に一回したから残りは九九九回だ。
「覚悟しろよ・・?」
「え?」
言うが早いか夫はサクラを押し倒した。
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