「本当にありがとうごさいました。」
「いえいえ、こちらこそ。」
昼食を終え片付けを済ませると、少女は帰宅するという。
日曜日の夕方、菜々飯店は家族連れの客で忙しいらしく、手伝いをすると言うのだ。
仕込み、開店準備、やることは幾らでもある。
SNSのIDを交換した二人。
「・・また、遊びに来て・・いいですか?」
躊躇いがちに尋ねる少女。
「いつでも。待ってるから。」
破顔一笑。
「ウチにも来て下さい。サービスします。」
そう言い残して少女は姿を消し、サクラは独りになる。
「恥ずかしいことブチ撒け合宿、か・・。」
確かにブチ撒けた。
互いに誰にも言えないこと、言いたくないことを曝け出した。
しかも知り合ったばかりの二人は、年齢も離れ、育った環境も違い、共通の知人もいない。
しかし、それが却って良かったのかもしれない。
知り合いであればある程、親しければ親しい程、口に出して難いことがあるのは確かだ。
そして、そういうことこそが、本当に相談したいことであるケースは確実にある。
相談して回答を得ること、理解や共感して貰うことが目的ではない。
相手が相槌を打ちながら、ただ聴いてくれるだけでも良い。
それだけで救われることがある。
しかも、だ。
今回、サクラには確実な収穫がある。
ひとつは『ナナ理論』、残りのひとつは『ヤキソバのレシピ』だ。
特にレシピについてはサクラの心の琴線に触れた。
『・・生意気、言いました・・。』
・・いい歳して・・
・・貧乳女子高生に教えられた・・。
高価な食材を使うのではなく、珍しい料理を作るのでもなく、夫の好物、夫の食べ慣れたモノを丁寧に作ってみよう。
「さて、と・・。」
夫に会える金曜日が、久々にサクラは待ち遠しかった。
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