それはサクラが寝入った直後であった。
ぐっ
不意に腹部に衝撃を受けたサクラは、呻き声を上げながら眼を醒ます。
突然の出来事、常夜灯がポツンと灯っただけの寝室。いったい何が起こったのか。
身体を覆う布団の上、ちょうどサクラの腹の辺りに棒状の何かが載せられている。
恐る恐る手を伸ばせば、それは誰かの脚。
顔を横に向ければ夫ではない誰か、、少女がサクラの隣で眠っていた。
そっか・・この子、泊めたんだった。
ベッドの上、二人は平行に並んで就寝したはずであった。
だが、今、少女は仰向け、かつ大の字に横たわり、しかも右に四十五度ほど回転している。
端的に言えば、寝相の悪い腕白小僧のような寝姿。
貸してあげた寝巻き代わりのトレーナーは、少女の体格には大き過ぎてダブダブ感は否めない。
ズレた襟元からは片方の肩が、裾の部分が捲れてヘソが覗いているのはお約束だ。
布団は、と見れば、サクラとは反対側に跳ね除けられているのは、恐らく蹴飛ばしたのであろう。
先程の腹部への衝撃は、回転の際に彼女の脚が、サクラの上に載せられたことによるものであったことは想像に難くない。
しかも、それなりの勢いを伴って、だ。
・・罰として・・辱しめの刑に処す。
スマホを手にフラッシュを焚きながら、少女の寝姿を撮影するサクラ。
バシャパシャバシャ・・
・・いけね。
・・バーストモードで連写しちゃったい。
溜飲を下げたサクラは、見下ろした少女の額が汗ばんでいることに気付く。
タオル、タオルっと・・。
畳んだタオルで軽く叩くように少女の額の汗を拭くサクラ。
汗を拭き終わったサクラは、少女の身体を乗り越えるようにして、反対側に蹴飛ばされた布団に手を伸ばす。
と、その時、不意に少女はサクラの身体に両腕を伸ばしてきた。
ひっ
あまりにも突然の出来事に動揺を隠し切れないサクラ。
少女は下からブラ下がるようにサクラの上半身を抱き締めてくる。
あ、あんた・・彼氏一筋だって・・
・・あたしだって・・夫というものが・・。
青少年ナントカ保護法とか・・
・・あたし、捕まっちゃう・・。
様々な想いがサクラの頭の中に渦巻く。
だが、少女の安らかな寝息は相変わらずだ。
・・寝惚けてる・・だけ?
安堵の溜め息をつくサクラ。
だが、その瞬間、少女の瞑ったままの両眼、その眼尻から一筋の涙が流れた。
・・おか・・あ・・さん・・。
身体を強張らせるサクラ。
自営業を営む少女の両親は忙しい。
幼い二人の弟のいる少女。
物心ついて以来、母親の左右の手は、常に弟達に占領されていたらしい。
上の子として、姉として我慢せざるを得ない場面があったのかもしれない。
無意識のうちに我慢していたのかもしれない。
サクラは少女に体重が掛からないようにしながら、身体を密着させる。
ついで、だ。
少女の頬に自分の頬をそっと擦すりつけてみた。
張りのある肌、弾力に富んだ頬、発熱でもしているのではないかという程、熱い肉体。
当たり前だが、いかがわしい気持ちはサクラにも、そして勿論、少女には微塵も無い。
ごろり
少女は寝返りを打って身体を横向きにした。
自動的にサクラと少女は、向い合わせに抱き合うようにして横向きに寝転んでいる。
不意に眠気に襲われるサクラ。
布団で少女と自分の身体を覆うと目を瞑る。
「おやすみ・・。」
※元投稿はこちら >>