少女の家は両親が切り盛りする中華系の定食屋なのだと言う。
その定食屋の一人娘にして看板娘、さらには跡取り娘のポジションを虎視眈々と狙う少女、それがナナだ。
「だって『菜々』飯店ですよ?あたしが継がないでどうするって感じ。」
うん。まあ・・
分かるような分からないような・・。
「・・・で、『看板娘としては、ですよ』の続きは?」
「それも、さっきサクラさんが言ったことなんですけどね・・」
『ひと手間、ふた手間だけで全然違う』
少女は訥々と語る。
僅かな手間で料理の味は変わる。
味が変われば、食べる人の気持ちが変わる。
表情も変わる。
また、この店に来ようと思ってくれるかもしれない。
次は別のものも食べてみようと思うかもしれない。
知り合いや家族を連れて来てくれるかもしれない。
良いスパイラルが生まれる、、かもしれない。
客が来てくれないのではない。
客が来るようにする為に何をどうするか、だ。
「・・分かってくれました?」
愕然とするサクラ。
あたしは・・
夫をなじるだけだった?
振り向いてくれないと恨むだけだった?
百歩、譲って・・夫の内面に踏み込もうとしたことがあっただろうか?
パッケージに記載されたレシピを唯々諾々となぞるだけ。
成否はともかく、工夫した、いや工夫しようと思ったことはあっただろうか。
・・生意気、言いました・・。
ごめんなさい・・。
恐縮するナナ。
少女は悪くない。
悪いのは自分かもしれない。
いや、自分だ。
少なくとも努力はしていない。
「こうしちゃ・・いらんない・・。」
「は?」
時刻は既に午前二時。
「ナナちゃん。寝よう。」
「?」
「んで、明日もう一度・・」
サクラが再現するヤキソバを食べて、是非とも評価して欲しい。
破顔一笑するナナ。
「喜んで!!!」
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