「あーぁ。今日、泣きっ放し。」
・・あたしは昨夜からだよ・・。
ナナ、サクラの順にシャワーを浴びた二人は、髪を乾かしながらリビングで向かい合って座る。
長年、鬱積していた想いを吐露したサクラは、憑き物が落ちたような気分だ。
だが、これが対症療法であり、根治療法ではないのは明らかだ。
定期的に少女に愚痴を溢すわけにもいかない。
「え?」
ア然とした表情を浮かべるナナ。
愚痴を聴くこと自体は、やぶさかではないが、と断った上でナナは言う。
「『サクラ理論』があるじゃないですか。」
・・何だ、それ?
・・ミノフスキー博士が提唱したから、ミノフスキー理論。
・・サクラが唱えるからサクラ理論。
首を傾げるサクラ。
・・みのふすきー?
「もぉ。サクラさんが言ったのに・・」
サクラ理論、それは『男は胃袋とおチンチンで出来ている理論』のことだ。
その理論に『サクラ』の名を冠するのは、勘弁して欲しいサクラ。
特別に『ナナ戦法』も使用を許可すると言い出した少女。
ナナ戦法、それは『ギュってして戦法』を示すらしい。
「要するに、ですね・・」
美味しい食事で喜ばせてから、抱きつくのだと少女は説く。
・・それを『ナナ理論』と名付けよう。
「でも・・」
恥ずかしい・・。
失敗したら・・落ち込む。
「何度でもするんですよ。それに・・」
最近、『ナナ理論』を実践したことはあるか、と問う少女。
「ご飯は作るけど・・」
確かに『喜ばせようとして』食事を用意した記憶は遠い。
抱きついたことは・・皆無だ。
「でしょ?試す価値はありますよ。」
それに、だ。
失敗・・ふふん!
少女は鼻で笑う。
「いい逸話があります。」
マンガで読んだのだと断った上で少女は語り始める。
あるところに、それはそれは頭の悪い男子高校生がいた。
頭の中にあるのは、ケンカとエッチなことだけだ。
しかもケンカ必勝至上主義。
だが、そんな彼も常勝将軍ではない。
ある日、袋叩きにされた彼は身動きが取れないままにリベンジを誓う。
「その時のセリフが痺れます。」
自分が負けだと思わない限り、自分は負けてはいない。
次は必ず勝つ。
「他にもありますよ。」
主人公は決戦に臨むサイボーグ戦士。
一対一の決闘。
だが、彼我の戦力差は歴然としている。
そもそもサイボーグ戦士としてのスペックが段違いなのだ。
主人公の特殊能力は、加速装置のみ。
旧式だと嘲笑われる主人公は呟く。
後は・・勇気だけだ。
「座右の銘ですよね・・。」
・・そ、そう・・ね。
だが、少女の言う通りかもしれない。
チャレンジする価値はある。
チャレンジ無き成功は有り得ない。
・・むう。
元陸上部の血が騒ぐぜ・・。
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