「最後の方、大号泣でしたね。」
・・面目無い・・。
「でも、そういうの・・ありますよね・・」
隣に座り、サクラの肩を抱いたままナナは呟く。
ほんの僅か、気持ちやタイミングがズレてしまったばかりに。
折悪しく、そんなことが続いたばかりに。
最初のひとつだけボタンを掛け違えたばかりに、全てのボタンを掛け違えてしまう。
「しかも・・」
時間が経てば経つ程、わだかまりは解消しにくくなっていく。
それは傷めた筋肉のアフターケアを怠ったばかりに、後々まで続く後遺症に似ている。
何よりも夫婦間の些細な出来事、しかも性に関わる事柄なのだ。
相談しにくい。
相談しても一笑に付されるに違いない。
サクラ自身、逆の立場であれば同じ対応をするだろう。
『気にし過ぎ!』
以上、お終いだ。
だが、少女は黙って聴いてくれた。
聴くだけではない。
隣に座って背中を撫でてくれた。
手も握ってくれた。
誰にも話せなかったコトを泣きながら話す中年女。
しかも、娘といっても差し支えない程、年齢差のある少女を相手に、だ。
・・軽蔑するよね・・。
・・気持ち悪いよね・・。
・・一緒に居たくないよね・・。
突如として笑い出すナナ。
それは爆笑と表現されて然るべき笑い方。
「な、何よ・・。」
・・そんなに笑わなくたって。
「だって、サクラさん・・」
・・昼間のあたしと
・・全く同じこと言ってる。
だから・・
「気持ち悪くない!」
キッパリと断言する少女。
軽蔑しない。
気持ち悪くない。
「・・一緒に居たい・・。」
そう言ってサクラの肩に顔を押し付けた少女の声は、昼間のサクラ同様、震えていた。
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