夜桜・・
・・見ていこうか・・な。
ちょっとだけ・・。
仕事を終え、簡単な買い物を済ませたサクラは、やや遠回りをして家路を辿る。
お目当は河原に植えられた一本の古木。
樹齢は数百年を数えるという。
今日は大丈夫だろうか。
怖くないだろうか。
脚が竦んでしまったらどうしよう。
怖いモノ見たさ、それもある。
だが、そもそも怖じ気付く程に怖いのであれば、近寄らなければいいのだ。
だが、サクラは分かっていた。
努めて意識しないようにはしていたが、昂りたいのだ。
桜の古木が醸し出す旺盛な生命力、そして生と死を感じることにより、性的な昂ぶりを得たいのだ。
次の角を曲がれば・・
・・え?
サクラは立ち尽くす。
そこに存在する筈の歳経た桜の巨木は、跡形も無かった。
移設されたのか切られてしまったのか。
いずれにせよ、そこに存在していた桜の木は無く、そこで得られる筈であった昂ぶりは、サクラから永遠に失われてしまった。
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