「とにかく一度、ここを出よっか。」
少女を助け起こすと同時に、躯を覆っていたバスタオルが滑り落ちる。
途端にムッとするような汗と牝の臭気が、少女の躯から立ち昇る。
昨夜、サクラが嗅いだ匂いと同じ、だが較べものにならない程、濃密な発情した牝の臭気。
少女の着ている館内着、その下穿きがどうなっているのかは想像するまでもなかった。
湯上りの女性のように、、ただし、やや下方、腰から下腹部を隠すように、ナナの身体にバスタオルを巻き付けるサクラ。
促されるままに立ち上がり、サクラに導かれ脚を運ぶナナ。
二人はロッカールームに辿り着き、館内着を脱ぐ。
だが、ナナの脱いだ館内着をどうすれば良いであろうか。
汗と体液に濡れ、強烈なまでに淫らな匂いを放っているのだ。
本来であれば使用済みの館内着は、各自が退館時に受付に返却せねばならない。
恐らくは、料金を払わずにサービスを受けようとする不法侵入者を排除する為のルールなのであろう。
だが、受け取った瞬間、異常に気付くに違いない強烈な匂いは如何ともし難い。
それは、少女を再び辱しめ、傷つける行為に他ならなかった。
えぇい、ままよ!
サクラはナナが脱いだ館内着を丸めると、使用済みのバスタオルを回収する為の巨大な箱に放り込む。
振り返れば、胸と股間を手で隠した全裸の少女は、身体を縮めて立ち尽くしている。
「洗っちゃおっか・・。」
そう囁くとナナの肩に手を添え、大浴場に導いていくサクラ。
サクラは掛け湯用の桶で汲んだ湯を、意識して腰や腹を重点的にナナの身体に掛け流す。
「もう大丈夫・・。」
だが、項垂れた少女は黙り込んだままだ。
サクラは黙って少女の肩に手を添え、湯船に誘う。
為されるがままの少女。
二人は並んで湯船に浸かる。
「・・軽蔑・・しますよね・・。」
「え?」
「・・気持ち悪い・・ですよね・・。」
ポツポツと呟くように話すナナ。
急に昂ぶってしまったのだと言う。
下着を付けずに館内着のみを身に付けた少女。
周囲の誰もが当然のように下着を付けていない状況。
つまり、少女自身についても下着を付けていないことは周知の事実なのだ。
恥ずかしい・・。
こんな姿を人前に晒している・・。
少ないが男の人もいる・・。
「・・ドキドキが・・ドキドキで止まらなくなっちゃったんです。」
羞恥心が刺激されることにより、性的に興奮してしまう傾向があることは、少女自身も薄っすらと自覚していた。
だが、その事実を受け入れることが出来ない。
自分はおかしいのではないか。
誰にも相談出来ない。
親、友人、教師・・。
病院で診察を受けることも考えたが、その突き付けられた結果が更なる悩みに繋がりかねない。
「・・折角、仲良くなれたのに・・」
・・サクラさんに嫌われちゃう・・
・・変なコだって思われたくない・・。
我慢しなければならない、そう思えばそう思う程、昂ぶり続けてしまった挙げ句、果ててしまった。
言葉を途切らせた少女に掛ける言葉が見つからないサクラ。
ショックのあまり泣くことすら出来ず、顔を強張らせた少女。
「昨夜、初めてイッたんです・・」
少女は絶頂に達した経験が無かった。
果てる寸前までは辿り着くのだと言う。
だが、その先には至ることが出来ない。
そんな少女が果てる寸前、気付いた視線、そしてその視線の主。
生まれて初めての絶頂。
公園を出る際、拾ったスマホ。
あの視線の主との関係はあるのだろうか。
ナナからサクラへの頼み事。
それはこの話を聞いてもらうことだった。
聞いて貰って何かが変わるわけでもない。
そもそも、スマホの持ち主との関連性すら明確でないまま、行動に移ってしまったのだ。
だが、行動せずにはいられなかった少女。
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