サクラに背を向け、つまり壁に躯の正面を向けて横向きに寝そべるナナ。
肩から被ったバスタオルに覆われたナナの背中が、不規則に動く。
ん、んんっ、ん、んっ・・
具合でも悪いのだろうか。
奇妙な唸り声が漏れていた。
最も可能性が高いのは脱水症状。
だが、たった今、少女はペットボトルの水を口にしていた筈だ。
クールダウン直後の熱中症も考え難い。
サクラは少女の身体に覆い被さるようにして、顔を覗き込む。
「え?」
少女はバスタオルの端を噛み締めて声を殺していた。
サクラの声と覗き込んだ気配に気付いた少女は、閉じていた瞼を開け、顔を上げる。
「・・見ない・・で・・。」
咽喉の奥から絞り出した少女の声は細い。
・・泣いている?
いや、泣いているのではない。
少女は恥じていた。
・・違う・・それだけじゃない。
場所も互いの位置関係も状況も違うが、少女の潤んだ眼だけが昨夜と同じだった。
躯の奥底から湧き上がる性の悦びを貪欲に味わっている牝の眼。
その瞳に戸惑いと羞らいの色が混じっていることだけが異なる。
堪らなかった。
無意識のうちにサクラは、少女の身体を隠すように背中から抱き締めていた。
・・見られたら・・嫌だよね・・。
・・恥ずかしいよね・・。
不規則に脈動するナナの背中。
肩と頭に手を添えるサクラ。
強張った全身は、ナナが耐えているものの強大さを示していた。
性的な絶頂を迎える寸前の少女。
だが、今、少女の手は動いていない。
いや、先刻から自慰に耽っているような仕草を見せていなかった。
なのに何故?
サクラの疑問を他所に、反り返ったと思うや否や、ナナは背を丸める。
細かな脈動が続き、徐々にその間隔が開いていく。
だが、ナナの呼吸は整わない。
嗚咽を堪らえ、肩を震わすナナは、タオルに顔を押し付けて泣いていた。
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