シャワーを終え、髪を乾かしたサクラは、朝食を済ませると出勤の準備を整える。
と、食卓の上に置いたスマホが震えた。
夫からの連絡。
おはよう。こっちは寒いな。
こっちも寒いよ。行ってらっしゃい。
あっさりとした返信。
夫に対する不満は無い。
勿論、たまに些細な揉め事はあるが、人生のパートナーとして概ね問題は無い。
夫もサクラに対して同じ想いを抱いているのであろう、、多分。
今、思えば結婚した頃の方が、遥かに諍いは多かった。
だが、互いに顔を背けたまま床についた後、どちらかが相手の布団に潜り込んでくれば、全てはそれで解決していた。
互いの指が、唇が、舌が、互いの肌に触れるだけで仲違いは解消し、朝まで互いの体温を感じながら眠り続けるのが常だった。
あれは・・
・・燃えた、な・・。
遠い記憶に想いを馳せるサクラ。
だが、今は諍いも無ければ、互いの布団に潜り込むこともない。
昨日と同じ今日、今日と同じ明日が、どちらかが死ぬまで続くのだろうか。
悪くはない。
悪くはないが、しかし・・。
身支度を済ませたサクラは家を出た。
駅に向かう道を歩きながら考える。
今日は金曜日。
だが夫はいない。
何か作るのも面倒だ。
晩御飯は適当に済ませてしまおう。
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