「・・大ショックでした・・。」
晩稲のナナが、やや遅めの初潮を迎えたのは、中学二年生になってからであった。
その為なのだろうか、少女らしい丸みに欠ける躯つきであったのは事実だ。
言っては何だが、サクラと向き合っている今、現在ですら、年齢相応のふくよかさ、とは言い難い。
「胸なんてペッタンコで・・」
年頃の少女であれば程度の差こそあれ、誰もが密かに抱えている体型に関するコンプレックス。
それを眼の前で口にされた、しかも、好意を寄せている相手に、である。
ナナの受けたショックの大きさは、想像に難くない。
「しゅん、ですよ、しゅん・・。」
『しゅん』、即ち、ナナの『悄然とした様子』がありありと眼に浮かぶ。
「でも、別にカレシくんだって・・」
悪気があったワケではなく、つい失礼な発言を漏らしてしまったに過ぎないのではないか。
「そうなんですよ・・」
だから始末が悪いのだと憤慨するナナ。
その晩のうちに少年から届いたSNSのメッセージは、詫びでも弁解でもなく、今日、観た映画に関するトピックスであった。
「そもそも、気付いてないんだもん。」
「そんなもん、そんなもん。」
いずれにせよ、その出来事と、生い立ちに由来する母親に対しての憧憬は、ナナにとって『ふくよかな躯』というイメージとして女性の理想像となって結実していく。
「サクラさん・・」
不意に真剣な眼差しを向けるナナは、頼みがあるという。
あー。
そんなこと、言ってたね・・。
・・何だっけ?
「いえ、それとは別口になります。」
ふーん・・。
いいよ、何?
「ギュッてしてくれませんか?」
「え。今?ここで?ナナちゃんを?」
真剣そのものの表情を浮かべ、狼狽えるサクラを見つめるナナであった。
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