照れ笑いを浮かべるナナ。
そういえば、サクラとて昼食はおろか、朝食すら摂ってはいない。
そう思った途端、サクラの腹もナナ以上の音で空腹を訴えて鳴く。
或いはフライドポテトの話が、ジャンクな味付けを想起させたのだろうか。
いずれにせよ、本能には勝てない。
「「へへへ・・。」」
顔を見合わせて笑う二人の女。
昨夜とは全く別の意味で羞じらいを共有した二人は、急速に心理的な距離を縮めていた。
「何か作ろっか。」
「そんな・・。悪いですよ。突然、押しかけておいて。」
ナナは押しかけたのではなく、自分の時間を割いて届け物をしてくれたのだから、気にすることはない。
そう言いながら冷蔵庫の扉を開けたサクラは、眼の前の光景に頬を強張らせた。
「う。」
過疎の村や集落における、交通インフラの衰退、小売商店の撤退等による共同体の衰退や消滅の一例に買い物難民という事象があるらしい。
サクラも詳細は知らないが、それらの事象を総合して限界集落と称すると言う。
・・限界冷蔵庫だな、これは・・。
冷蔵庫の中の物資は乏しい。
タマネギ、ニンジン、ピーマンなどの常備菜が、一個、一本、三個。
肉や魚などの生鮮食品は皆無だ。
保存の効く加工食品としては、使い切りタイプのスライスハムがワンパック。
後は調味料の類いのみだ。
「・・・・在り合わせになっちゃうけど、いいかな?」
「全然、大丈夫です。お構いなく。」
『在り合わせ』という巧い表現。
やはり日本語は美しい。
そんな感慨もひとしお、サクラは腰を屈め、シンク台の下、乾物置き場を開く。
乾麺のパスタが・・
・・あった。
「ナナちゃん、パスタは平気?」
「大好きです。何パスタですか?」
「野菜たっぷりナポリタン。」
「ぃえ~い!」
食材の在庫状況により、野菜の比率が高いだけなのだが、そこはそれ。
無け無しの食材を並べたサクラは、野菜の水洗いを始めた。
「お手伝いします。」
腕捲りしながら立ち上がるナナ。
「じゃ、そこに鍋が入ってるから、お湯沸かして貰えるかな?」
「塩と油ってどこですか?」
お。分かってるねー。
さすがに女子。
洗い終えた食材を俎板の上で刻むサクラ。
その隣で湯を沸かすナナ。
妹とか・・娘がいたら・・
・・こうなのかな・・。
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