「自分でするようになって・・」
かなり心を開き始めたが、『オナニー』という単語を口にすること自体に未だ抵抗を感じるらしいナナ。
サクラとて同様だ。
中高生の頃、放課後のガールズトークが盛り上がり過ぎ、その手の話題になることがあった。
そんな時、少なくともサクラが知る限りでは、誰もが知っているその単語を、誰もが敢えて口にすることを避ける傾向が顕著であった。
エスカレートしたガールズトークは、時として品が無くエゲツない。
だが、エゲツない話題に盛り上がりながらも、その単語を口にすることだけは何故か憚られた。
三十年近くを経た今でも、その単語を口に出すことには抵抗があるし、少なくとも親しい友人との会話においてすら、サクラ自身は口にした記憶は無い。
話を戻そう。
個室を与えられたナナは、少なくとも以前に比べれば自由に自慰に耽ることが可能になっていた。
「勿論、気持ちいいんですけどね・・」
だが、何かが足りない。
まだまだ、こんなものではないはずだ。
方法が悪いからなのか。
何か不足している要素があるのか。
熱弁を振るうナナ。
「まだ、中学生で身体がそういう風に出来上がっていないから、とかは?」
「それも考えましたけど・・」
いずれにせよ、満ち足りない性生活を密かに送り続けるナナに転機が訪れたのは中二の秋。
同じクラスの男子生徒に告白されたナナは交際を始める。
ひゅぅひゅぅ!
熱っついねー。
「もぉ。茶化さないで下さいよぉ。」
顔を赤く染めて照れるナナ。
しかし、恥ずかしい反面、冷やかされるコト自体を嬉しがっているのも事実だ。
嬉し恥ずかしってヤツだな・・。
・・こんちくしょー。
いろいろあったが、その彼氏との交際は今でも続いていると言う。
ほほう?
と、いうことは?
昨夜、一緒にいたのも?
「はい。昨夜、一緒にいた彼です。」
最早、覚悟を決めたのか饒舌になったナナは、踏み込んだコトまで語り始めた。
「最初は、ですね・・」
当然のことながら、二人の中学生の交際は至極、真っ当なものから始まる。
交際を始めたことは、互いの友人達にすら内緒である。
学校の帰り道、学校、互いの自宅からも離れた場所で落ち合い、他愛無い話を延々と続ける。
休日には図書館で試験勉強をし、課題を片付ける。
互いに手を繋ぐことすら出来なかった。
「キッカケは偶然だったんですよ・・」
ファーストフードの店内、ラージサイズのフライドポテトを挟んでダベり続ける二人は、同時にポテトに手を伸ばす。
ぁ。
小さな叫び声が聞こえたのは二人だけ。
偶然、二人の指先が同じフライドポテトを摘まもうとした結果、互いに互いの指先を摘まんでしまう。
息を呑んで見つめ合う二人の中学生。
騒然とした店内に二人だけの空間が突如として発生していた。
※元投稿はこちら >>