同時にスマホを見遣るサクラとナナ。
どうぞ、とばかりの仕草をするナナを横目にサクラはスマホの画面を見る。
夫だ。
『通話』をタップしてスマホを顔の横に掲げるサクラ。
「あ、おはよ。あたしサクラ。」
「おぉ。スマホ、届いたか。俺、朝早く拾ってくれた人に電話かけちゃってさぁ・・。」
聞いた聞いた。
今、一緒にお茶してる。
うん、若い子。高校生だって。
「マジか?可愛い?」
シバくぞ。
で?
白ヤギさん、御用は何ぁに?
「そうそう。出張、延びちゃった。」
ほう?取引先の手違い?
あらら、大変。
じゃ水曜日に戻ってくる筈だったけど金曜日に戻るのね?
はい、気を付けてね。
「あ。出来れば高校生の画像・・」
バカめ。
電話の向こうで何か言っている夫を無視し、問答無用とばかりにサクラは一方的に通話を終える。
「出張、延びちゃったんですか?」
「あ、うん。聞こえた?」
「いえ。今朝の電話でワーって。」
夫は電話に出たナナに向かい、一方的に出張が延長になる旨を捲し立てたという。
そうなのだ。
そそっかしいというか思い込みで行動するというか。
挙げ句の果てに電話の趣旨すら脱線しかけていた。
『マジか?可愛い?』・・だぁ?
スマホを置きながら、紅茶のカップを手にしたナナを改めて見遣るサクラ。
この子・・可愛いじゃないの・・。
こんな可憐な子が・・
昨夜・・あんな・・。
美少女というわけではない小柄な少女。
だが、整った顔立ち。
黒眼勝ちで切れ長の眼。
木目の細かい肌。
すらりと細く長い真っ直ぐな手脚。
惜しむらくは胸の膨らみは有るか無きか、という点だが、それとて成長期であることから考えれば、これからだ。
昨夜、読んだ官能小説において、ロリコンの中年男性が女子中高生に妄想を繰り広げるのも分からないではない。
あたしゃオッさん・・か。
不思議そうな眼でサクラを見つめるナナ。
う。そんな眼で見ないで・・。
覗き見しちゃうような女なの・・。
覗きながら・・しちゃったし・・。
あぁ自己嫌悪・・。
「で、本題って?」
胸中の想いを振り払うようにサクラはナナに問い掛けた。
※元投稿はこちら >>