「ごめんなさい・・。」
サクラにしてみれば、悪意は無かった。
盗み聞きや覗き見をするつもりは毛頭なく、こっそりと立ち去るチャンスを逸したに過ぎない。
だが、被害者たるナナにしたら、そのショックたるや如何ばかりだろうか。
「・・凄く・・恥ずかしくて・・。」
身を縮め、耳まで赤くして俯くナナ。
立つ瀬が無いサクラ。
二人の間を沈黙が支配する。
高校生の頃・・か・・。
サクラは遠い記憶を遡る。
付き合っていた彼氏と一緒にいるところを、手を繋ぐ姿を見られるだけでも恥ずかしかったのだ。
あんなところ・・見られちゃったら・・
・・泣いちゃうよなぁ・・。
「・・あの・・サクラさんに・・」
話が、いや、頼みがあると言うナナ。
乗り掛かった舟、今更、断ることなぞ、サクラには出来るわけがない。
「あたしで出来ることなら・・」
取り敢えず引き受けざるを得まい。
それでもナナは俯いたまま、言葉を濁す。
「ナナちゃんみたいに可愛い子のお願いだったら、こんなオバさんで良ければ、何でもしてあげるよ。」
「サクラさん・・・オバさんなんかじゃありませんよ・・。キレイだもん。」
「またまたまたぁ。」
お世辞でも嬉しい。
思わず顔が緩むサクラ。
「・・本当に・・いいんですか?」
「ホント、ホント。」
「・・実は・・」
そこから始まった少女の話、それは長い話であった。
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