恐縮至極のサクラは、少女を玄関先に立たせたままであったことに気付く。
「五分だけ待ってくれる?」
散らかっているわけではないが、さすがにそのままリビングに通す勇気は無い。
それにサクラ自身の姿。
寝巻き兼部屋着のスウェットはともかく、起き抜けの為、化粧はおろか髪はそのままだし、ブラジャーもしていない。
慌ててガスでお湯を沸かしながら、リビングを片付け、髪に櫛を通す。
・・女の子だし・・いっか。
ブラジャーはしないことにしたサクラ。
そもそもサクラの胸は大きくはない。
サクラ自身としては、小振りだが形が良いという自負があるのだが、残念ながらそれは服を脱ぐまで分からないのが惜しまれる。
「何も無いけど、お茶でも飲んでいって。」
「あ、はい。有難う御座います。」
リビングに通された少女にソファを勧め、サクラは紅茶を入れる準備を始める。
「サクラさんって呼んでいいですか?」
そういえば自己紹介すらしていないことに気付いたサクラ。
改めて互いの名を告げる二人。
「ナナちゃんって呼んでいい?」
「はい。菜の花のナナなんですよ。」
漢字では菜々と書くらしい。
「いいじゃない。キレイだし可愛らしいし、春っぽいし。」
「でも、中学の時のアダ名、サイサイだったんですよ。どこのパンダよって感じ。」
高校二年生だと言う少女、ナナは、ひとしきり笑い終えると不意に表情を固くした。
暫しの沈黙の後、言葉を選ぶかのように口籠もりながらナナは呟いた。
「・・そのスマホ、どこで拾ったか・・分かりますか?」
黙り込むサクラ。
ぽつりぽつりと言葉を紡ぐナナ。
とある公園の入り口だとナナは言う。
「昨日、友達と会った後・・」
ところどころを曖昧に表現をボカしながら話す少女は、頬を染め羞らいながら続ける。
サクラの顔が強張っていく。
あの子・・なの・・?
「一瞬だけど・・眼が遭ったの・・覚えています・・よね?」
忘れられるわけがない。
他人の性行為を見たこともなければ、覗き見をしたこともない。
屋外において自慰に耽ったこともない。
いわんや十代の少女が淫らな獣と化し、躯をくねらせながら果てる姿なぞ、想像すらしたことはなかったのだから。
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