眠りから弾き出されるかのように眼を覚ましたサクラ。
窓の外は白み始めているが、枕元に置いてある目覚まし時計を覗き込めば、時刻は未だ五時半にもなっていない。
起床の予定時刻迄には三十分以上ある。
不意に先刻まで観ていた夢の内容が、サクラの脳裏に蘇ってきた。
同時に顔がカッと火照る。
三十年近く昔の出来事、しかも些細過ぎる異性との接触を想い出し、当時の自分自身が、幼いながらも欲情していた事実を改めて、、三十年ぶりに認識してしまう。
「うっわぁ・・恥ずかし・・。」
思わず口にしてしまえば、それがまた恥ずかしくて堪らない。
枕に顔を押し付けて顔を隠す。
言えねー。
絶対、誰にも言えねーな。
つーか、この顔、誰にも見せらんねー。
敢えて乱暴な言葉で表現することにより、無理矢理、羞恥心を押し隠すサクラ。
夜明けの寝室、夫は昨日から一週間に及ぶ出張なのだから、誰にも聞かれることも見られることもない。
だが、しかし、だ。
夢の中とはいえ、久々のトキメキだった。
家事をこなし会社に行き、家庭と職場の責任を相応に果たす日々。
そんな判で押したような退屈な毎日の中、トキメキを感じることなぞ、ついぞ無い。
いや、トキメキそのものの存在すら、いつの間にか忘れ去っていたのが実情だ。
しかも、純情可憐な幼い自分の微笑ましく、甘酸っぱい想い出でトキメいてしまった。
少女時代以来、ベッドの上でうつ伏せになったまま、脚をバタバタさせてみるサクラ。
さすがに・・やり過ぎ・・だよ、ね。
違う意味で気恥ずかしくなったサクラは、それでも上機嫌でシャワーを浴びる為、ベッドから抜け出した。
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