小さなポーチに小銭入れとスマホだけを放り込み、家の鍵を手にしたサクラは玄関に立つ。
無意識のうちに踵が低く、靴底が柔らかい靴を選んだが、その理由を後から追いかけるように考える。
足音を立てないように。
少しでも周囲の耳目を集めないように。
そうまでして一体、自分は何をしたいのか。
相反した想いがサクラの中で対立する。
暫し逡巡したサクラは、意を決してドアのノブに手を掛ける。
ドアを開けて玄関からマンションの共通部分たる廊下に立つサクラは、四月の生暖かい夜風に嬲られていた。
六階建てのマンションの三階。
エレベーターは使わない、いや、使えない。
狭く密閉された空間の中で誰かと一緒になったら、、、サクラの放つ匂いに気付かれてしまったら。
そんなことは有り得ないのだが、サクラの妄想は留まることを知らない。
・・階段を使って降りよう。
辺りに人影は見当たらない。
今がチャンスだ。
歩き出すサクラ
だが、無情にもサクラが数メートル足を進めた瞬間、電子音が響くと同時にエレベーターの扉が開き、中から制服姿の少女が姿を現した。
同じフロア、何号室かは知らないが、顔に見覚えのある高校生と思しき少女であった。
こんばんは
儀礼的な挨拶に会釈をしながら、サクラはぎこちない挨拶を返す。
こんな時間に・・。
予備校にでも通っているのだろうか。
少女の後ろ姿を見送りながら、サクラの昂ぶりは尋常ではなくなっていた。
彼女に気付かれなかっただろうか。
高校生であれば、サクラの放つ匂いの意味が、そしてどんな状況で生じるものなのか理解している可能性は高い。
・・・号室の女の人・・
凄い匂いだった・・。
そんな女だと思われたとしたら。
大量の蜜がサクラの股間を濡らす。
まるで生理の際、大量の経血が下腹部の芯を経て滲み出るかのように溢れ出していた。
非常階段を下りながらサクラは考える。
自宅の周辺では危険だ。
少し離れた場所を選ばなければならない。
だが、どこへ。
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