視界が眩み、頭の中で何かが弾けた。
躯が震え断続的に痙攣が、同時に絶頂が繰り返しサクラを襲う。
凄い・・。
・・こんなの・・
初めて・・。
サクラとて小娘ではない。
躯は性的にも成熟し、年齢相応にそれなりの経験もしてきたつもりだ。
だが、今この瞬間、サクラの躯を襲い続ける快楽は、過去の経験に較べれば桁違いであった。
自分自身の欲望を露わにすることにより、これ程の快楽が得られるとは。
荒れ狂う暴風に晒された木の葉のように、サクラは翻弄されていた。
ダメ・・。
・・壊れ・・ちゃう。
或いは自己保存の本能がセーフティとして機能したのであろうか。
限界を遥かに超えたサクラの昂ぶりは、徐々に収まり始めていた。
肩で息をするサクラは、額から流れ落ちる汗を手の甲で拭いながら考える。
欲望を露わにしただけで、これ程までに昂ぶってしまったのだ。
露わにした欲望を誰かに知られたら、一体、どうなってしまうのだろう。
具体的に言えば、たった今、スマホに入力した文章をネット上に解き放ってしまったら、ということだ。
読み耽った官能小説の登場人物達は、偶然にも道を踏み外してしまい、様々な葛藤を経ながらも正規のルートに戻ることはなかった。
彼女達は戻ろうとしながらも、または戻ることを望んでいながらも、結局、戻らなかった。
いや、戻れなかったのだ。
今、サクラは現実的なレベルにおいて、自分が彼女達と同じく岐路に立っていると感じていた。
陵辱されたわけでもなければ、破廉恥な姿を晒したわけでもない。
密かに抱えている淫らな欲望をネットの片隅に匿名で放つ、ただ、それだけだ。
それが誰かの眼に触れるのか、何らかの反応が返ってくるのかも分からない。
けれど踏み外してしまいかけている事実、内容はともかく、正規のルートに戻るか、戻らないかの判断を迫られているのは事実だ。
正規のルートに戻るのであれば、事は簡単であり、入力した内容を消去するだけだ。
だが、この場合、二度と道を踏み外して前に進む決心がつかないであろうことが、何となくサクラには分かっていた。
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