河原に座り込んだ僕は俯いたまま、黙ることしか出来なかった。
不可抗力とはいえ、家族同然、姉弟同然の幼馴染に対して、剥き出しの性欲をぶつけてしまったのだ。
その罪悪感と恥ずかしさは、筆舌に尽くせない。
僕の背後で川から上がったサツキは、無言のまま焚き火の準備をし、魚を焼き始めた。
ぱちっバちばチっ・・
焚き火から火の粉が弾ける音がする中、背後から戸惑いがちな腕が恐る恐る僕の身体に回される。
同時に温かく柔らかい身体が、背中に押し付けられた。
「・・びっくりしたぁ・・。」
「・・・」
それは僕も同じだ。
見慣れているはずの幼馴染の裸に欲情し、あまつさえ生まれて初めての射精まで披露してしまったのだ。
するり
ゆっくりとサツキの片手が動き、躊躇うように僕の股間を探る。
震える手が萎えたペニスに触れた。
僅かに躊躇った後、竿の部分を少女の細い指先が優しく摘まむ。
「・・さっきと・・・違う・・。」
「・・・」
「・・・嬉しかった・・・。」
「え?」
こいつは何を言っているのだ。
糾弾されて当然だと思っていた僕は、困惑する。
「ヌシゃ、ワァのこと女だと思ってなかったろ?」
「・・・・」
当たり前だ。
幼馴染で姉弟同然、家族同然の存在に異性を感じていたら一緒に風呂になぞ入れるわけがない。
あ。
そういうことか。
『一緒には入らん!』
あの時のサツキの宣言の意味が、その時になって初めて分かった。
サツキは僕を異性として認識していたのだ。
サツキが?
僕を?
突如として僕を襲う羞ずかしさ。
同時に生じた肉体の変化。
「「あっ!」」
二人は同時に小さく叫んだ。
サツキの指に摘まれた僕自身が力を取り戻し、あっという間に完全なる復活を遂げたのだ。
ぱんっ!
「馬鹿、エッチ・・。」
僕の後頭部を軽く叩いたサツキは、くつくつと笑いながら脱ぎ捨てられていたワンピースを拾って頭から被る。
今更ながら照れているらしく、その横顔は湯上りのように赤く染まっていた。
「焼けてるよ。」
「あ、うん。」
僕も服を着ると、サツキと焚き火を挟んで向かい側に座る。
互いに押し黙ったまま、黙々と握り飯と焼けた魚を食べる。
食べながら僕達は互いの様子を伺っていた。
互いが互いに視線を感じた瞬間、顔を伏せて魚を食べることに集中しているフリをする。
何度かそれを繰り返しているうちに、偶々、二人の視線がぶつかった。
へへへ・・
悪戯を見つかってしまったかのように、はにかんだ微笑みを浮かべる少女。
その笑い顔の意味が、僕には分かる。
サツキの笑い顔なら、生まれた時から見てきたのだ。
ご満悦なのだ。
ちぇっ
舌打ちしたい気分であった。
してやられた、そんな気持ちもあったが、サツキの笑顔を見た瞬間、跡形もなく吹き飛んだ。
あんな顔を見せられたら、何もかも許してしまう。
そんな笑顔だったのだ。
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