それは僕達が五年生の夏のことだった。
夏休みも終盤を迎え、急ピッチで宿題を片付けねばならない。
二人で協力、、サツキは書き写すだけだったが、、しながら宿題を進めていたが、その日は殊の外、暑かった。
「もう無理・・。川、行こ・・。」
間も無く昼という頃、その日だけでも何度目かのギブアップ宣言をしたサツキは、鉛筆を放り出し、身体を倒して畳に仰向けになる。
「・・しょうがねぇなぁ・・。」
ボヤきつつも、想いは僕も全く同じだ。
とにかく暑過ぎる。
幸いにして宿題も目処はついてきた。
手早く片付けを始める僕の行動を眼にしたサツキは、今までのダラダラ加減を余所に、機敏な動きで片付けを開始する。
サツキの母親が出掛ける前に昼飯用にと、握り飯を作ってくれていた。
「暑っつーい!腹、減ったぁ。」
僕ではなくサツキのセリフである。
握り飯を手にした僕達は河原に向かう。
確かに暑い、そして堪え難い程に腹が減った。
「ね、知ってる?身体を動かさなくても、頭を使っただけでも腹は減るんだって。」
お前、書き写しただけじゃねーか。
勿論、心の中で呟くだけだ。
上機嫌で話し掛けてくるサツキに頷き返しているうちに、僕達は河原に着いた。
「勝負しよっか?」
「え?」
勝てるわけがない。
それは僕だって川漁師の息子として、少なくともサツキとほぼ同じキャリアはある。
だが、僕が三尾捕まえる間にサツキは五尾以上捕まえる程、実力差は歴然としていた。
「ハンディあげるから。」
「え?」
「ワァが三尾、ヌシが二尾。先に捕まえた方が勝ち。」
サツキの口調から真剣であることが見て取れる。
五分五分とはいかないが、勝ち目が無い事もない。
「良し。やろっか。」
「で、負けた方は今日一日は子分ね!」
そう言うが早いか、サツキはつるりとワンピースを脱ぎ捨て、裸になるなり川に飛び込んだ。
あ?
え?
サツキはワンピースの下に何も着ていないかった。
恐らくはこの展開を予想して、下着を脱ぐ手間を省く為、家で下着を脱いできたのだ。
だが問題はそこではない。
一緒に風呂に入らなくなって三ヶ月以上が経っていたが、サツキの身体は、別人のような変貌を遂げていた。
膨らみ始めた胸は、丸みを帯びて乳房の体裁を取りつつあるし、何よりも下腹部の一部には極く淡くだが、翳りが生じている。
「ず、ズルいぞ!」
何を考えているのだ。
あれはサツキ、、河童だぞ。
頭の中に浮かんだ想いを振り払うかのように叫ぶと、服を脱ぎ捨てた僕は、裸になって川に飛び込んだ。
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