水辺の妖怪、河童は突如として思春期の少女に変貌した、、わけではなかった。
昨日の態度は何だったのだ、そう思わせる程にサツキは変わらない。
粗雑で粗暴な荒々しい姉モドキ。
辟易とさせられながらも、僕や周囲はサツキの変化に気付いていく。
周囲の悪ガキはサツキの身体的な変化に、僕はサツキの態度や心情的な変化に気付き始めていた。
「なぁ。最近のサツキ、エロくねぇか?」
「あ?え、あ、そうか?」
確かにサツキの身体は、明らかな変貌を遂げつつあった。
粗末な服の下で膨らみ始めた胸、丸みを帯び曲線で構成されるようになりつつある腰から尻。
その割には細く長い手足。
だが、そんなことは、僕にとって大した問題ではなかった。
生まれてから毎日のように顔を合わせている家族同然の僕にとっては、日々の肉体的な成長なぞ認識しきれない。
認識出来るのは生活習慣や態度、そのひとつの例が入浴だ。
物心ついた頃から姉弟同然に育ってきた僕達は、互いの家を往き来しながら一緒に遊び、ケンカをし、泣き、泣き疲れれば昼寝をし、風呂に入り、寝かしつけられていた。
白状すれば、あの日の数日前までは一緒に風呂に入っていたのだ。
「一緒には入らん!」
あの日以来、サツキの宣言通り、僕達が一緒に風呂に入ることはなくなっていた。
「お。フラれたかぁ?」
「フラれてなんか無ぇ。」
酔っ払った互いの父親達に憎まれ口を叩く僕の前を、湯上がりのサツキが通りかかる。
石鹸?
シャンプー?
河童のクセに。
人前において僕とサツキの間には、、少なくとも表面上、、隔たりが生じていた。
伸ばし始めたサツキの髪は、いつの間にかオカッパではなくなっていたし、胡瓜や川魚の匂いはしなくなっている。
だが、ふたりきりになれば話は別だ。
例の秘密基地では、今まで通りのサツキが今まで通りの僕を子分扱いしながら、素潜りで捕まえた川魚を焚き火で焼いて食う。
僕達は戸惑いながらも、互いの幸せな時期に安住していた。
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