『囲ワレ者の儀』の当日。
一睡も出来ず、布団の中で寝返りを繰り返していたあたしは、夜明けと共に起こされる。
事前に説明されていた儀式の準備をする為だ。
神主の奥さんに連れられて河原に行って服を脱ぐ。
震えながら川の水に浸かり、身体を浄め、神社の古井戸から汲み上げた井戸水で再び身体を浄め、俗世間の垢を落とす。
体裁としては、あたしは神に捧げられ、神から集落に渡された共有財産になるという。
・・どーでもいーよ、そんなこと。
・・神も仏も居るもんか・・。
細く長く男衆に可愛がってもらえるように、食事と言えば麺類だけ。
冬の日暮れは早い。
陽が傾く頃、神主の奥さんが風呂を沸かす。
裸になったあたしは、服を着たままの奥さんと一緒に風呂場に居た。
髪を洗われ、奇妙な匂いのする油を髪に擦り込まれ、また濯ぐ。
後ろ髪を上げられると、うなじに剃刀を当てられ、首筋から背中にかけての産毛を剃り落とす。
最後に全身を洗い上げられ、ムダ毛の処理。
内緒だが冬場ということもあり、不精していた脇と下腹部にも剃刀が当てられた。
「ね。サツキちゃん、最後にもう一度だけ聞くけど・・・気は変わらないの・・?」
あたしは無言で頷いた。
溜め息をつきながら奥さんは続ける。
「何度か説明したけど・・・」
囲ワレ者候補者が男を知らないのであれば、一度だけ、その場にいる男衆に結婚の意思を問う。
立候補する為の条件は、その場にいる、独身者である、そして囲ワレ者候補者が申し出を受け入れる、だ。
その申し出が成立する為の条件は、その場に同席する男衆の見守る中、囲ワレ者候補者を抱き、性交し、破瓜の徴を皆に証明する。
だが早生まれのヤヨイは満で十四歳、数え歳で十五歳。
その場には居るだろうが、男は十八歳まで結婚出来ない。
「いい?ここが大事・・。立候補の条件は・・」
その場にいる独身の男衆、そして手を挙げる、ただそれだけだと強調する奥さん。
「必ず結婚するのであれば、結婚の時期は関係ないの。」
だからこそ破瓜の徴を証明するのだ。
え?
それって・・。
「ただ、ね・・・」
衆人環視の中、全裸になって女を抱ける男は、そうそう居るものではない。
プレッシャー、緊張、羞恥心。
何よりも結婚しようという相手との性行為を、集落中の男衆に見せつけること自体に抵抗を感じないものはいない。
「・・立って。脚、広げて。」
あたしの股間に触れた奥さんは、呟いた。
「サツキちゃんの条件には問題は無さそう、ね。」
奇跡が起きる為の幾つかのハードル。
その第一関門だけがクリアされていた。
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