宴が終わり、数日が経った頃であった。
呼び出された僕達二人は、大人達から大目玉を食らう。
いつ頃から、何処で、何をしていたのか。
正確に言えば、『ガキが色気づきおって』という教育的指導だ。
身を縮めることしか出来ない僕。
だが、さすがはサツキだ。
「え?ダメなの?」
キョトンとした眼で大人達に質問を返す少女。
毒気を抜かれた大人達は言葉を濁し、またもや僕はサツキに窮地を救われる。
「不純異性交遊は禁止!」
「・・不純じゃないもん。」
確かに一線は超えていなかったし、サツキは微塵も悪びれていないのだ。
最後の難関は僕の母だったが、無邪気に微笑むサツキに籠絡された母は、苦笑しながら愚痴をこぼす。
「・・あの子には・・敵わんわぁ。」
だが真の意味では、それは愚痴ではなかった。
結局、義娘と息子がこれまで通り、そしてこれからも仲睦まじく日々を過ごしていれば、母にとってはそれで良い。
父については、次の日にして酒が減ることはなかった。
僕は希望していた高校に進学し、高校進学の準備どころではなかったサツキは、一年遅れて定時制の高校を受験、当然だが合格を果たす。
昼間は僕の父と川漁をし、夕方になれば原付をカッ飛ばして高校に通う日々を過ごす。
特筆すべきは神主についてだ。
サツキの高校進学、生活費に至るまで何くれと世話を焼いてくれたらしい。
「・・指、入れちまったしな・・。」
あの晩、役目とはいえサツキの性器を皆に晒し、辱しめてしまった事に気が咎めていたと言う。
ただのスケベジジイではなく、意外な篤志家であったのだが、個人的に僕は許さない。
数年後、結婚式を間近に控えた僕とサツキは、久しぶりに二人の秘密基地に足を運んでみることにした。
「変わらんね・・。」
「うん。変わらん。」
勿論、微妙な変化はあるのだが、これまで通りの景色は、これからもこのままであろう。
「火ぃ、起こしといて。」
言うが早いか、サツキは服を脱ぎ始める。
あ。
馬鹿・・。
何、考えてんだ・・。
あっという間に裸になったサツキは、躊躇うことなく、川の中に姿を消した。
焚き火が勢い良く燃え始めた頃、水飛沫が上がる。
大きな鱒が三尾。
サツキは口に一尾を咥え、左右の手にそれぞれ一尾ずつを掴んで川から上がる。
相変わらず見事な腕前だ。
だが昔と違うところが、ひとつだけ。
サツキは胸と下腹部を腕で隠しながら、川から上がって来た。
「変わらんけど、変わったな。」
「何、それ?」
そう言って微笑むサツキ。
どうやら、ご満悦らしい。
完結
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