「まずはオボコかどうかの確認をする。」
『未通女』と書いてオボコ、つまり男を知らぬ処女であった場合、ミソギの意味で神主自身が、囲ワレ者候補者を抱く。
破瓜の出血を穢れとして厭うことが理由だというが、本当かどうかは怪しいものだ。
破瓜の徴を、つまり出血を確認したら、集まったメンバーの中から二名を籤引きで選び、囲ワレ者候補者を順番に抱く。
オボコでなかった、つまり非処女であった場合は、集まったメンバーの中から三名を籤引きで選び、囲ワレ者候補者を順番に抱く。
「ただしオボコだった場合、一度だけこの場で全員に確認をする。」
昔は、処女であれば嫁に貰うという者もいたらしく、その場にいる独身者には、手を挙げる権利があるという。
「ただし、だ。」
手を挙げた以上、責任を持って貰う必要がある。
後からゴネられては堪らない。
「この場で皆が見ている前で抱いて貰う。」
皆の見ている前で囲ワレ者候補者を抱き、処女を奪った証として出血させ、既成事実として皆が共有するというのだ。
「言い忘れたが・・」
いずれの場合にせよ、囲ワレ者候補者を抱くのは、今この場で皆が見ている前で、だ。
人前で複数の男達と性交することは、囲ワレ者が集落の共有財産であることを意味する。
皆が静まり返る中、神主は事を進めていく。
神棚に向かい、何やらムニャムニャ唱え、謎の仕草で徳利から注いだ水で濡らした榊を使い、全員の頭に触れていく。
無茶だ・・。
呆然とすることしか出来ない。
この二年間、幾度となく試したが、サツキは痛がって一度たりとも挿入に成功したことはないのだ。
それを三人と、しかも皆に見られながら、だ。
十五歳の少女は壊れてしまう。
身体も。
精神も。
からからから
神棚の横にある御簾が巻き上げられた。
御簾の奥、薄暗闇に座った小さな白い人影。
サツキだ。
間違いない。
白い浴衣のような薄物を身に付け、畏まって座る少女の姿はいつもより小さく見えた。
神主の合図に従い進み出た少女は、車座の真ん中、布団の上に座ると三つ指をついて頭を下げる。
「・・こ、今宵は・・皆様のご、御厚情に縋るべく、この・・身を・・晒すことを、お、お許しください。」
一夜漬けで覚えさせられたのであろう口上を、つかえながら口にするサツキ。
いつの間にか、肩より長くなった髪は梳られ、首の後ろで結われている。
薄化粧を施した顔は、白粉越しにも蒼褪め、引き攣っていた。
ほぉお
軽い賛嘆の溜め息が巻き起こる。
サツキは美しかった。
もはや河童では無く、間違いなく年頃の少女として花開く寸前の蕾となっていた。
そして、その蕾は間も無く無残にも手折られ、散らされてしまうのだ。
「そこで仰向けになりなさい・・。」
一瞬、怯えたように身を震わせたサツキは、諦めたような表情を浮かべ、その場で身体を倒し布団の上で仰向けになる。
身体を横たえたサツキの足元に神主が膝立ちになり、足首を手で握った。
堪らずサツキは、両手で顔を覆い隠す。
大きく脚を広げられ、膝を曲げさせられた少女の股間が露わにされた。
薄物の下には何も着けていない。
誰もが一言も発せずにいる中、神主の手がサツキの股間に伸びていく。
ぐっ
サツキが唸り、身体を固くしていることが手に取るように分かる。
集落の男達が見守る中、少女は性器を露わにされ、事もあろうか、指を挿入されようとしているのだ。
その恥ずかしさ、屈辱たるや如何ほどであろう。
「間違いなく男は知らん・・。」
張り詰めていたサツキの身体から力が抜ける。
だが既に限界なのであろうか、サツキは広げた脚を閉じようともせず、妖しく艶やかな花弁を晒したままであった。
「では、この娘を嫁に取ろうという者はいるか?」
誰も手を挙げなかった。
僕は俯いて唇を噛み締めていた。
走馬灯のようにサツキの思い出が蘇る。
河原で、学校で、家で、笑い、怒り、泣き、走り、泳ぎ、食べているサツキ。
今、何もしなかったら、二度とサツキと顔を合わせることは出来ない。
サツキのいない人生、そんなものは考えられない。
出来るか出来ないかではない。
やるか、やらないか、だ。
「・・・誰もおらん、か・・・。」
その時、その場に響めきが疾った。
「お、おい・・。」
隣に座っていた父が戸惑いながら、僕に声を掛ける。
いや、その場にいる全員が戸惑っている。
誰も僕を責めないだろう。
サツキですら、僕を責めることはないだろう。
だけど僕は僕を許さない。
絶対に。
僕は手を挙げていた。
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