【8】黒い想い(時間の表記誤りの為修正。凡ミスでした)
後をつける為ではない、同じ会社だから必然的に亮は佳代の後ろを歩くことになる。
アダルトサイトの体験談であれば、ここで佳代に声をかけ、奴隷化していくことが多い。
だが、亮は少し違った。
佳代を味わいたい、そんなことを考えたくも無い。亮が身体を重ねる女は、自分の妻だけなのだ。
さほど美しくは無いとしても、自分にとって最高の女性であり、自分の嫌いな女に触れるなど身の毛もよだつこと。
いや、昇格や評価の為に、佳代をものにするべきなのかもしれないが、触れるのも躊躇うほど、苦手なタイプだ。
佳代は、下着を自ら着けて来なかったのかもしれない。
意外にも他の理由があるとしたら…考えられる可能性としては、痴漢に切り落とされ外されたのか。
だとすると、下着なしのことを佳代に言ったとして、自分が返り討ちにもあいそうだ。下手をすると痴漢呼ばわりされるかもしれない。
メールで痴漢の詳細を連ねてやろうか。だがサーバにデータは残るだろう。出元が自分だと言うこともすぐに知れる。
そんなリスクを背負うのも御免だ。
では、どうするか…
大勢の目に晒してこそ、だ。
会社の中。休憩に入るまでが、チャンスだろう。
先ほどまで顔を赤らめ、必死に堪えていた佳代は、エスカレーターを降りる頃には、いつもの職場で見る顔つきに戻っていた。
やがてオフィスに入り、12時前に昼からの出勤者の昼礼が始まった。
亮は、仕事も手につかず、佳代の隙を覗い続けている。
亮の同僚や後輩には、佳代を敵視する者も少なくない。
13時…13時半…少しずつ時が過ぎていく。ミスをすれば、佳代からの叱責が待っているのだが、今日の亮は仕事に集中することは難しかった。
佳代が会議室に呼ばれ、席を立つ。こちらに向かってくる。
(今だ)
亮は椅子を回転させ「すいません」と隣の席の男に声をかけると同時に書類を落とした。
そして佳代が丁度通るところへ足を出したのだ。
ドサッ!
思い切り、佳代は躓き、前へ転ぶ。
書類を拾おうと周囲の社員が身をかがめている中央で転倒する佳代。膝を打ち、起き上がるまでに少し時間がかかった。
その数十秒、亮も、社員も、佳代のスカートの中に目がいってしまう。
(え…)
(まさか…)
男性社員の視線も、考えも、同じであり、本気で佳代の怪我を心配する者など、亮の周囲にはいなかった。
「すいません、大丈夫ですか」亮が声をかける。
「え、ええ。ごめんなさい。有難う」
そう言い残し、佳代は服の乱れをサッと直すと会議室へ急いだ。
休憩室。亮はメッセージアプリで部署の仲間と会話をしていた。佳代が下着をつけていなかったのを、少なくとも4人の男は見ていた。
「欲求不満か?」「俺たちを狙っているのかw」「目が腐りそうだったw」など等、酷い言葉が乱れ飛ぶが、いずれにせよ、佳代の秘密を周囲に知らしめることが出来た。
(これでいい…そのうち、誰かが手を出すだろう。いや、出さないかもしれないが、「変態なお局様」のイメージは餌になる)
亮の気持ちは軽くなり、今日のチャンスも確りと活かせたことで、夕方以降の仕事は捗った。
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