【7】通勤電車
偶然の重なりは、佳代を追い詰める。
引篭りに等しい進だが、その日はPCのHDDを増設しようと、街中の量販店に向かおうとしていた。
玄関を開けてすぐにドアを閉める。
(あの女だ…)
スーツ姿の佳代が地下鉄駅に向かっている。
路線としてはさほど混雑しにくい地下鉄ではあったが、その日は天候も悪くいつも以上に混雑していた。
こんな機会は滅多に無い。シフトで昼からの出勤である佳代、偶然家を出た進。
同じ車両に乗り込むとしても、少し距離がほしい。その強くキツい顔を見たい…進はその欲求のほうが強かった。
湿度でむっとする車内。佳代には油断も隙もあり過ぎだった。
最後の客が乗車したそのとき。
ヒールの足でどうにか踏ん張ろうとする、丁度肩幅に開いた両脚の間に、男の手が入り込んだ。
〝えっ…〟
40代に入り、絶対に自分がそのような対象になるわけがないと思っていた佳代の隙をついたのだ。
佳代は、前日のryoの言葉に昂り、毛を剃り落としている。
〝いけない…〟
〝変態だと…淫らな女だと気づかれてしまう…〟
〝やめて…〟
気の強い佳代ではあったが、間違いを嫌う傾向があった。
冤罪での痴漢に仕立て上げられた人やニュースを見ており、大声を張り上げることが出来なかったのだ。
偶然あたっているのか、入り込んでしまったのだと、自分に言い聞かせる。だが、それは明らかに佳代の両脚の間を捉えている。
紛れも無い痴漢。
痴漢に対する嫌悪感。それと同時に、刺激を身体がそれを求めていた。
〝その指は、何に触れていたの?〟
〝汚い…〟
〝嫌…触らないで…〟
佳代の思いも虚しく、身動きが出来ないほどの満員状態であり、されるがままだった。
都合良く肩幅に開かれた脚の間は、男の手を容易に進ませる。
〝あぁ、それ以上は…〟
その佳代の想いと同時だろう。痴漢の手が止まる。
下着がない。
単なる痴漢OKという女ではない。
痴漢の脳裏にも、すぐさま佳代の変態性が浮かんでくる。
一気に汗ばむ男の手と指。
Mなのか。それとも…変態か。
後姿を見る限りは、スーツに身を包んだ堅そうなお局様のようだが…
容赦なく男の指は、佳代の敏感な部分を捉える。
血が逆流するような感覚。
更に男を喜ばせる感触はすぐだった。佳代の毛は剃られたばかりだ。
男の中指が、佳代の膣の中へ滑り込むと同時に、男は少し手首を捻り、親指と人差し指でクリトリスを摘み出した。
痛いくらいの感覚でありながら、背後から、見たことも無い男に、隆と出会ってからは隆しか知らない部分を好き勝手に弄られていく。
痛みとともに押し寄せる感覚に、佳代の理性が少しずつ崩壊し始めた。
顔を真っ赤にしながら快楽の波に、声を出さないよう堪える。
進は勃起せずにいられなかった。佳代の左側から、進はつぶさに見続けた。
(あの女が…偶然にも自分の目の前で苦痛に耐えている…)
間もなく、地下鉄は1つ目の駅に停車した。男の手が一瞬動きを止める。力が抜ける佳代。
後ろから更に押される感覚に、胸や腹が苦しくなる。そして、運が良いのか悪いのか、後ろから押されながら亮が入ってきた。
亮には、すぐに佳代がわかった。佳代の斜め後ろまで押されてしまったが、亮は憂鬱な気持ちでしかなかった。
(うわ…1番逢いたくない女を朝から見ちゃったな…)
亮は佳代に気づかれないよう、地下鉄が動き出すと同時に下を向いた。
そのとき。亮の目には、隣の男の手が佳代を捕らえていることに気づいた。
あまりの事態に、亮も頭の中で整理するのに時間がかかった。
いや、佳代はそういった不正というのか、あってはいけないことを絶対に許すタイプではない。
だけど…。佳代が顔を蒸気させ、目をぎゅっと瞑っているのが横目に入る。
(まさか)
でも、どうやって確かめようか。
亮は1番嫌いな女の右側から、カバンを手元に引き寄せるようにしながら、偶然に引っかかったスカートを捲り上げてみる。
佳代の両脚の間に男の手が入り込んでいるのが見えた。
間違いない。
(助けようか)
だが、佳代はそういったものに素直に礼を言うようなタイプには感じられない。
(それに、下着はどうしたのか)
亮は、面白いショーを見るつもりで、佳代も、痴漢の男についてもそのままにすることにした。
せいぜい1駅だが、佳代にとっては何十分もの苦痛の時間。
声を出せず、快楽だけが押し寄せるだけではない。
少なくとも、この痴漢には佳代が変態であることがわかっている。
だが、それだけではない。佳代こそ知らないが、亮と進に見られている。
カバンと傘を持つ為、痴漢の手を払いのけることが出来ない。
下を向き、堪え続ける。痴漢の指を受け入れ、肉芽を摘み弾かれ、とめどなく愛液が太ももを伝う。
ガクガクと痙攣し、佳代は軽く頂点に達した。
一部始終を見た亮と進。
(へっ…結局佳代も女ってことか) 亮は唇の端を歪ませながら、妙な征服感を覚え、佳代に続いて次の駅で降りた。
進は、もう1駅先である為、地下鉄から佳代を見送った。
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