(え?…)
共用のトイレのドアを開けると人の気配、と言うより薄い通路に何人も人が。
通路で話してる人、各テナントのドアを開ける人にドアから出てくる人。
階段を駆け上がって来る靴の音に、コツコツとユックリ下がって行くヒールの音。
どこか違う階からは、笑い声まで聞こえてくる。
ま~★からのメールに終業時間と有ったのを思い出し腕時計を見ると16時50分にそろそろ針が指しそうになっている。
(もうこんな時間だったんだ…)
っと思って時計を見ていると
「お疲れ様です。
今日も暑かったですね」
と顔を合わせると良く声をかけてくれる、他のテナントの女性が近付いてくる。
「顔も大変(笑)
ここのトイレもどうにかして貰わないと、直しに来るんだか、酷くしに来るんだか分からなくなりますよね?(笑)」
そう声を掛けると友美と入れ替わる様にトイレに入っていく。
羞恥心に焼かれた友美を静かに見守っていた薄い通路が今、羞恥心を思い出せとばかりに好奇心と言う仮面を剥がしていく。
仮面を剥がされた羞恥心はまた、くすぶり始めてチリチリと友美の体を焼き、スイッチを押す。
ここ数時間でさえ何度も寸止めを繰り返したその体は友美の気持ちを置き去りにしながら、そのスイッチに敏感に反応してしまう。
(下着は、絶対に見つからない。
でももし、あんなの佐々木サンが見たら…)
入れ替わりに入った女性の歪んだ顔を思い浮かべると一瞬腰を引き、トイレから早く離れたくなり薄暗い通路へと足を進めていく。
通路には名前は知らない物の顔を合わせたい事が有る面々が。
近くに行けばお互いに会釈を。
そして通り過ぎる際に暑かったせいか、その男性の匂いが漂って来る。
(なんで髪にまで、あんな事を…
私の匂い、絶対…)
嗅ぎ付かれるはずがないと思っていたものが、絶対に匂っていると変わっていく。
戻れなくなった、共用トイレに残した自分の分身を思い浮かべながら。
つづく。
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