「夕べは 遅かったの?」
大学近くの喫茶店,いつもより暗いムードを察したのか,彼女が聞いてくる
浮気を見た翌日,いつもと全然変わらない彼女の様子に より気持ちが暗くなった
「ん,9時位にはあがったよ」
「そうなんだぁ,早く出られて良かったね♪」
表情に全く変化無し
「で,街を通ったんだけど」
「そんな時間なら,人いっぱいだったでしょ」
「うん,腕を組んだり手を繋いだりしてるカップルが いっぱいだったよ」
「そうだったんだぁ」
まだ変化無し
「ところで,夕べは何してたの?」
「夕べ?その時間ならベッドでゴロゴロしてたよ♪」
「あれ,夕べ 街に居なかった?見たんだけど!」
固まる彼女
「仲良さそうだったね,手を繋いで」
「えっ,え,,,」
ようやく表情が 変わる
一気に畳み掛ける
「いつから付き合ってたの?」
「付き合ってるだなんて,,,夕べはゼミの打ち上げで,たまたま飲んでて,ちょっと手を繋いだだけだよ!」
「あれ,家に居たんじゃなかったの?」
「・・・」
彼女の目が 俺の目を見る
「飲み会で遅くなっちゃったから心配かけないでおこうと思って!」
申し訳なさそうな声で彼女が言う
「もう,嘘はつかないで!」
俺の強い口調に おどおどしながら頷く彼女
「いつから付き合ってるの?」
「付き合ってなんかいないよ!」
「じゃあ,そんな関係になったのは,いつからなの?」
「そんな関係って?手を繋いだだけだよ!」
「また嘘をつくの?」
「・・・夕べが初めて,,,」
「嘘ばっかり!この間 そいつと二人で○○に行ってたじゃん!一晩一緒に泊まって 何もなかったっていうの!?」
「どうして知ってるの!?」
「聞いたからだよ」
「誰に!?」
「それは言えない」
言えるわけがない,かまをかけただけだなんて,,,
「・・・」
再び黙ってしまう彼女
目には大粒の涙が
「本当にゴメンなさい」
泣きながら謝る彼女
その様子を見ながら,冷静になる俺
「泣いてちゃ,わからないよ」
「泣かなくて良いんだから」
「もういいから。。。」
どんな言葉にも ただ泣いているだけの彼女
「で,あいつは 誰なの?」
「・・・高校の同級生」
「もしかして高校時代の彼氏?」
小さく頷く 彼女
高校時代の彼氏,すなわち彼女の初体験の相手
また少し動揺する
彼女の性体験は 俺,前の彼氏,そして高校時代の彼氏の3人だと聞いていた
「そうなんだ~」
「夏休みだから,帰ってきてたの」
「そっか~」
「会いたいって言われて,,,」
「ん?じゃあ,夕べが初めてなわけないじゃん,高校時代に!」
「うん,,,」
県外の大学に進学したから 別れたけど,心の中ではまだ好きだった
他の人と付き合って 吹っ切ろうとしたけど 駄目だった
彼が帰省する度に 会っていた
俺と付き合いだして からは会っていなかった
久しぶりに電話があって,大学を卒業したら こっちに戻ってくると聞いて,心が動いてしまった
我慢できなくて,会いに行った
彼と○○へ遊びに行き,その夜アパートに泊まった
彼の車で一緒にこちらに帰ってきた
でも,好きなのは 俺だけ
もう彼とは会わないから 許して!
吹っ切れたのか,嘘をつく気も無く 一気に話した彼女
また冷静さを取り戻す俺
「別れようか。。。」
涙を流して嫌がる姿を見て,少し心が揺れたが,やはり許すことが出来なかった
気まずい沈黙
「もう,無理だよ。。。」
俺の言葉に謝る彼女
何度同じ言葉を告げただろう
そして,,,
「さようなら,幸せにね!」
俺からの最後の言葉に,頷く彼女
一人で喫茶店を出た時,正直ほっとしていた自分が居た
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