続き。
由美に彼氏ができていた。
複雑な心境だったが、恋人ができたら、教えてくれる筈だったんじゃ…
しかし、いざとなれば、秘密にしたくなるものかも。
相手の男は何者だろう…
キスより先にすすんだのかな?
幼馴染みで親友…そう思っていたが…
私は塾帰り、あのコンビニに立ち寄って、由美がいないか、確認してしまう。
しかし、再び会えることはなく、夏休みに入って間もなく…
由美は相変わらず部活でいそがしいようだが、帰宅が遅くなる事が多くなっていた。
「ねえ、ゆうちゃん、由美から何か聞いてない?」
おばさんが帰りの遅い由美を心配して私に尋ねてきた。
聞いてはいないが、理由はわかる。
「理由聞いても、居残り練習としか言わなくて…学校に問い合わせても、そんなことはさせていないって。好きな人ができたのかしら…」
私は答えようがない。
「おばさん、彼氏はゆうちゃんだと思っていたんだけれど」
「いやぁ、すいません」
「ゆうちゃんからも聞いてみて」
そんなことがあって
暫くして、由美と話をする機会が訪れた。
私は久しぶりに由美の部屋へ。
おばさんには話を聞いてほしいと言われた。
由美の部屋は女の子にしてはさっぱりしていて、人の部屋を地味な部屋と言えない。
由美は日焼けし、少し痩せたようだ。
「なあ、由美…」
「ママに何か言われたんでしょ?」
「え…うん…最近帰りが遅いんだって?」
「やっぱりそのことかぁ…でー?ゆうちゃんはどう思ってる?」
「どうって…俺はわかんないよ…由美には由美の事情があるだろうし」
公園での光景がよぎる。
「ママもゆうちゃんもわかってるんでしょ?私に男ができたって」
「できたのか?」
「まぁね…」
「なんだよ、恋人できたら、教えてくれるって約束だろ」
「そんなの、いざとなったら出来るわけないじゃん!ゆうちゃんはできるの?」
「……わ、わかんない…」
「出来ないって!秘密にするつもりはないけど、わざわざ話したりもしないよ」
「うん」
「どんな人か知りたいなら、ゆうちゃんには教えてあげるわよ」
由美は私の返事を待たずに話し始めた。
由美の話しでは、彼氏は高校のOBで、今はスポーツクラブのインストラクターをしている
。
OBの縁でソフトボール部の筋トレの指導をしていて知り合ったのだとか。
なかなか会えないから、部活帰りに逢瀬を重ねているらしい。
「って、ママに報告しといて!迷惑かけないからって!」
まさか公園でのことを話すわけにもいかず、仕方なく、聞いたままをおばさんに伝えた。
「そう…やっぱり…ゆうちゃんが相手なら何の心配もないのに…」
その後、由美は部活に恋愛に頑張っていたようだった、そんな時、夏期講習の帰りに、由美をみかけた。
え!?私は驚いた。
由美は見たこともないような派手な服にハイヒール、化粧もしていた。さらに驚いたのは、腕組みしている男があの公園でみた男と違うことだった。
インストラクターの男より歳で、かけているサングラス、背広は何か近寄りがたい雰囲気だった。
本当に由美なのか?
まちがいなく由美だ。
私は混乱していた。
なにより、由美は部活…しかも合宿中の筈…
どうなってるんだ?
二人は駅に向かって歩いている。
後をつけていくと、由美は駅前のロータリーから、タクシーに乗ってどこかへいってしまったのだ。
いぶかしがりながら、帰宅すると、家に母とおばさんがいて、何やら深刻な顔。
「あ!ゆうちゃん!大変よ!」
「由美が部活の合宿に行ってないのよ!」
「それに、退部したって!!」
あまりに突然だった。
私はさっき見たことを話すしかなかった
「そんな!由美は何をしているのよ!」
当時、携帯電話などはなく、連絡の取りようがない。
とりあえず、夜まで由美からの連絡を待つ。
はたして、由美から電話がかかってきた。
折り悪く、おじさんは長期の海外出張で頼る事ができない。
「由美!あなた何をしているのよ!」
珍しくおばさんが怒鳴る。
「ええっ!?何をバカな事いってるのっ!!心配しないでって!誰といるの!ちょっと!由美!…」
「正子さん?」
「由美なんて?」
「部活やめて、彼氏と旅行って…なにを考えてるの!あの子は!」
あの男と旅行?とてもそうは見えなかった。
私は公園でのことを伏せて、以前見かけた男と別人だったと話した。
「そんな…」おばさんは泣き出してしまう。
ひとまず由美が無事であることは確認できた。
私の母とおばさんは翌日由美の言っていたインストラクターの男の所在を突き止めて話を聞くが、別れたから関係ないという。
しかし、このインストラクターの男はとんだ食わせものだったのだ。
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