男に連れられて入った店は、焼き鳥屋だった。
飲み会の帰り、お腹も膨れている私には、焼き鳥の匂いも胸につかえる感じだったけれど、そこの砂肝は、こんな状態でさえも覆す美味しさだった。
私はビールのあと、焼酎の水割りをおかわりして、
カウンターでおじさんの横に座っている。
おじさんはなんこつを食べながら、
『彼はいるの?』
と質問してきた。
グラスには、私と同じ焼酎の水割りが注がれている。
います と私は答えた。
彼は今ごろ、何してるだろう。
その思いが一瞬、頭をよぎる。
だけど、それは、F1が目の前を通り過ぎる時より、あっけなかった。
『彼がいて、どうして、ついてきたの?』
あー、どうして、おじさんについて行ったか。
を聞かれている。
私は考えたが、途中で、考えるのもまとまらなくなって、というか、面倒になって、さっき思ってた事をそのまま、答えた。
セックスがとてもしたくて、そしたら、やらしそうなあなたが声を掛けてくれたから。
『やらしそう?』
おじさんは、心外な様子で驚いた声をあげたが、ニヤリと笑った。
『そういうのも顔に出るんだなぁ』
そう言いながら、グラスの水割りを飲み干し、追加注文をした。
そして、私の方を見ながら、
『じゃ、俺に期待してるわけだ、あなたは』
と、カウンターに置かれた私の手をさすってきた。
私は、少し間を置いて、おじさんから目をそらし、うなずく。
この人なら、私を気持ち良くさせてくれる。
そういう予感が、確かにあった。
『じゃ、しようか』
おじさんは言う。
私はおじさんを、もう一度、見定めるようにじろじろ眺める。
そして、うなずく。
うん。して。
と。
そう思った決め手は、
長い指と、短く切り揃えられた爪だった。
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