それをぼんやりと眺めながら、タバコを吸う。
植え込みの石段に腰掛けていた男が去ったので、その後に腰掛けて、ゆっくり煙を吐き出す。
会社の同僚たちは今ごろどうしているかなんて考えない。
今は、自分の性欲とその処理に夢中だ。
駅の近くにアダルトショップがある。
今の酔い加減なら、そこに行って、ローターの一つくらい買える気がする。
このタバコを吸い終えたら寄ってみようと思う。
ふと、視線に気付く。
その方向に目を向けると、50代くらいのおじさんと目が合った。
ずっと、私を見ていたのではないかと思うような、じっとりした目で私を見ていた。
目が合うと、反らすどころか、こちらに近づいてきた。
『これから、空いてる?』
唐突な声掛けだった。
私は、その男をじっと見た。
背は170センチくらい。髪は少し前の方が後退していて白髪混じり。コートを着ていて、中の服装まではわからないが、くたびれてない感じ。
顔はあまり好みでないけど、なにより、不潔でなさそう。いやな臭いもしないし。
私は、
『はい、空いてます』
と言った。
『少し酔ってるように見えるけど、もう少し飲んでいかない?』
男はそう言った。
私はそれに頷いた。
本当は飲むよりもしたい事があるのだけれど、まだ飲んでも良いと思った。
見ず知らずの男に声を掛けられてついていくなんて、初めてだ。
それが、私より20歳ほども年上の男で、そして、
ちっとも好きなタイプでない。
だけど、すごくやらしそうだった。
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