夜の海って綺麗ねぇ…ずっと眺めてると海に吸い込まれそう。
美津子は俊彦の手を拒む事なく、自らも重ねた手を握って行く。
ノースリーブの肩口から美津子の肌が俊彦の腕に触れる。
俊彦は自分の年齢も忘れ、肌が触れ合う事に、甘酸っぱい感覚を覚えていた。
それは美津子も同じで、その事を口にしたのは美津子が先だった。
こうして居ると昔の若かった頃を思い出してしまうゎ。
美津子の言葉に俊彦は言葉の代わりに重ねた手に少し力を込めた。
俊彦の手の中で美津子の指先が動く、俊彦は美津子の指先に自分の指を絡めて行く。
やがて握り合った俊彦の腕に美津子の体重が微かに掛かり始める。
時折り通り過ぎる車を気にする事もなく、甘酸っぱい感覚に酔うように指を絡め合い立ちすくす二人。
そこの石段から岩場に降りてみましょうか?
俊彦の言葉に頷く美津子。
外灯もなく明かりは月の光りだけだった。
慎重に足場を確かめながら岩場を縫うようにコンクリートで固められた歩道を歩く。
やがて人間を、すっぽりと隠しても余りある大きな岩が現れる。
俊彦は、そこで立ち止まる。
握り合った腕を引き寄せる。
美津子にも思いは通じてたかのように俊彦の胸に顔を預ける。
大きな岩に身を隠すように美津子を抱きしめる俊彦。
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