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「い……いいえ、あんもうだめえん……、先生だめぇ、イクぅ、ひイクぅ、イぃ……クぅ……」
「どこがどうイクのか教えて欲しいですね、ほら」
彼の突きの強さに子宮も圧しつぶされる。
「あ……あそこ……、く、クリトリス……が……、イク……ん……」
「女性の秘密を教えてください、もっと、もっと」
「はぁ……あう……、ゆ、ゆるして……、お……お……まん……こが……、だめに……なっちゃう……んっ」
「奈保子さんが言うと余計に色っぽい。言わせたこっちが照れてしまいますよ、まったく」
彼はまたその脂ぎった顔面を私の胸にうずめ、左手で背中を引き寄せ、右手のバイブレーターで女性器の深いところを物理的にいじくりまわす。
いつまでも終わらない、二度と引き返せない、一度目を上まわる肉体の絶頂が、失恋に似た未練とせつなさを私にあたえた。
もしも今日が桃の節句ならば、お内裏様に見初められたお雛様は、言い寄られるままに女の杯を男の甘酒で満たし、あれよあれよと夫婦(めおと)の契りを隠密に交わす。
そんな物語があってもいい。お雛様だってセックスもするし、オナニーもするだろう。なぜなら、女性は誰もがお雛様なのだから。
「なかなか派手にイク女だ、君って人は。安全日や危険日なんてものは存在しない。今日は君と私の記念日になるんだよ、奈保子」
出海森仁の態度が微妙に変わった。彼は私からバイブレーターを引き抜いて、無造作にそれを投げ捨てる。それから私を床に這わせた。
『orz』の格好にさせられた私の背後から、獰猛な生殖器が飛びかかる。
じゅぱん、びちゃん、ねちょ、ねっちねっちねっち──。
腰と腰が衝突して、ペニスはヴァギナを掘り進む。彼が唸れば私が喘ぎ、首を左右にいやいやさせる。
彼の骨盤が私のお尻を揺すれば、性器のつなぎ目からは熱い体液が糸をひいて飛び散った。
夢の中で味わったどの快感よりも、現実のそれは容赦がなかった。
私は何度も絶頂し、何度も許して欲しいと懇願した。彼は何度も射精し、何度でもやらせろと威張った。そして、愛しているとも言った。
私はもうだめだ。気絶から立ち直ったとしても、彼はまた私を失神させようとするだろう。それだけのものを彼は持ち合わせている。
膣がはちきれそうな性的ストレスを感じ、大量のザーメンは子宮口を塞いでいる。
そんな時だった──。
病室のドアの鍵がガチャリとはずれ、開け放たれたそこから誰かが飛び込んできた。
そして私たちを見つけるなり、こう言うのだ。
「パパ、もうやめて!」
そこにいたのは、夢の中で出会った女子高生、愛紗美ちゃんだった。
出海森仁医師の狼狽(うろた)えようを見れば、彼と彼女が親子の関係にあることは疑いようがなかった。全裸の私もとうぜん狼狽えた。
「愛紗美、ここには来るなと言ったはずだ。はやく出て行きなさい!」
「なんでそういうことをするの?その人にひどいことしないで!」
少女は父親に向かって興奮気味に訴えている。
「違うんだ。彼女は、小村奈保子さんは不妊治療をするために私を頼ってきたんだ。私だって一応産婦人科の医師だからね。愛紗美にはまだ理解できない世界かもしれないけど、大人には大人の事情があるんだ」
「事情事情って、結局セックスがしたいだけじゃない!そうやってあたしのこともレイプしたくせに……。ひどいよ……、パパ……」
彼女は涙で顔を濡らしながら、こちらに歩み寄ってくる。そして私をかばうように彼から離すと、その清純な制服に自ら手をかけていく。
「愛紗美ちゃん……、なにしてるの?」
「奈保子さんはあたしの夢を見たんでしょ?あたしも奈保子さんの夢を見たんだ。あたしを痴漢から助けてくれた。だから今度はあたしが──」
あどけない下唇を噛んだまま俯いて、順調に発育した体をさらけ出すように、彼女は下着姿になってはにかんだ。ふわっと、若いホルモンの匂いがした。
私の代わりに、実の父親である出海森仁に抱かれようというのだ。
「だめよ、愛紗美ちゃん。あなたはもうこれ以上汚れちゃいけない」
しかし彼女は私の声を聞き入れようとはしない。
花瓶のように白い肌から白い下着がすべり落ち、かつての自分みたいな淡麗な理想肌がそこにあった。
「私は愛紗美をレイプしたつもりは一度もないよ。だって、あんなに愛し合ったじゃないか」
彼は異常な目で言う。彼から受けた淫らな治療のせいで、私の体はもうくたくたに疲れ果てていた。いまの私では彼女を止められそうにない。
その初(うぶ)な乳房と、くびれた股間の割れ目を、彼はその肉親の手で溺愛するのだった。
「可愛い愛娘をレイプする父親がどこにいるというんだ。そうだろう?どうなんだ?こうして欲しいのか?」
出海森仁は愛紗美というかけがえのない存在を、自分の思い通りの色に染めていく。彼が愛撫した部分は明らかに火照って、生々しく紅潮していった。
「先生、やめてあげてください。彼女はまだ高校生です。もっと別な愛し方があるんじゃないでしょうか?」
「どんな愛し方をしようが私の勝手だ。それとも奈保子さん、君が私の新しい妻になってくれると言うのなら、愛紗美を許してあげてもいいのだが」
「そんな……」
私が絶句するそばで、彼の指は未成年の膣をぐずぐずとこねている。そこから透明な液がたらたらと滴り、彼女は細い体をよじってすすり泣く。
「それならこうしよう。もう一度だけ、君なりの言葉で私を誘うんだ。私が奈保子さんを諦められなくなるくらいの台詞を」
出海森仁は筋肉を汗で光らせながら、私を見下ろした。
しかし、なにを言ったらいいのかわからない。果たして彼の望むものが私の中にあるのだろうか。
私は床にお尻をついて両脚を外側に開き、左手で乳首をまさぐり、右手で性器に乱暴した。
そして──。
「私……、私は……、無理矢理犯されてもイクし。ええと……あれは……その……、フィストファック……だと思うんですけど、それも経験済みで。可愛い雑貨だって……、オナニーに使ってしまいます。だから──」
「だから?」
「私は自分で濡らした、お……、おまんこをひろげていますから、だから、私のおまんこを貰ってください、先生」
「そうですかそうですか。クスコやペンライトにも興奮しますか」
「はい、先生……」
「着せ替え人形の手足で、ひとり遊びをするのですね?」
「はい、おもちゃにします……」
「臨月だろうと、ぎりぎりまでは私に抱かれたいと言えますか?」
「はい、かまいません……」
「生理から解放されるなら、私の子どもを妊娠してもいいのですね?」
「え……と、それは……」
私はそこで口ごもってしまった。彼の洗脳に流されてしまいそうになるところで、ある人物の顔が浮かんだからだ。
「篤史さん──」
もうずいぶんと久しぶりにその名を口にしたような気がする。
そう、あれは夢の中で会ったのが最後だった。
片方の夢では、私と風間篤史は恋人の関係にあった。
もう片方の夢では、私は彼との結婚と離婚を経験し、人生の歯車を狂わされてしまっていた。
そして今、現実の彼はどうしているのか。それは私の左手薬指で光り輝いていた。
いや、私たちは入籍と挙式を目前に控えながら、彼だけが不運な事故の被害者になったのだった。
受け入れなければいけないのは淫らな夢ではなくて、今ここにある現実なのだ。
なぜだか私の頬を熱い涙がつたう。
ごめんなさい。あなたの子どもが欲しかったのに、こんな男の汚い精子で尊い卵子を浪費してしまう私を、どうかゆるして。
出海医師は自分の娘をベッドに運ぶと、振り返りざまににやついて、無防備な私を正面からレイプした。
「いやあああ……!」
太いペニスの頭は、女性のいちばん感じる部分を局地的にすり減らしていく。
そこにはオーガズムのスイッチが眠っていて、彼はそれを知っている。
卑怯な行為だけれど、彼の肉体と離れたくない、そう思う自分がいた。
脳が酸欠になり、アルコールがまわるような感覚に体が揺れる。
全裸に布団を重ねただけの出海愛紗美は、潤んだ目でベッドの上から私たちの行為を見つづけている。
愛紗美ちゃんにも、ごめんなさい。
私は快楽の中で彼女に謝罪した。
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