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感情がこもった、それこそ恋人同士がするキスの肌触り。
拒否しなければと頭ではわかっていても、彼女の持った雰囲気がそれをさせてくれない。
密着する唇と唇、互いの息を交換する女と女、愛し合う二人。
彼女が私を求め、私が彼女を求める。発情した動物から出る体臭をむさぼるように、本能に逆らわずに行為をつづけた。
「……!?」
それはあまりにも突然すぎた。男性スタッフが私の乳房に食いつき、じっとこちらを見ながら乳頭を舌でころがしはじめたのだ。
とっさに背筋にちからが入って、私は大きく仰け反った。佐倉さんとのキスの接点が押し潰され、歯と歯がぶつかる。
それでも口づけが止む気配はない。左右の乳房はさんざん舐められているおかげで唾液にまみれ、乳首に関しては説明がいらないほど気持ち良くて、ぷっくりとした存在感をアピールしている。
「……!」
次は股間が大変なことになった。クンニリングスのヴァージンを奪われてしまった。
こんなに気持ちいいのは反則だ。私だって一応30年も女をやっているというのに、そんなふうに女性器を舐められたらもうその相手が誰であろうが理想の男性に見えてしまう。
舌先が中に入ってくる、だめ、そんな内側まで、いや、もっと下手だと思っていたのに、ほら、その舌づかい、やだもうイっちゃうってば。
キスの合間に漏れる音、乳房をしゃぶられる音、クンニリングスで愛液を吸い取られる音、私の体中からくちゅくちゅくちゅといやらしい音が出ている。
感情が高ぶって、目に涙が浮かんできた。絶頂の前はいつもこうだ。
そうして私は佐倉さんの唇に喘ぎ声を吹きかけたまま、愛おしい快感を膣いっぱいに受けて、分娩台の上でくたびれた。
痙攣する腹筋が子宮をたたく。膣と直腸が波打っているみたいに切ない。
「貴重なサンプルだ、慎重に採取するように」
出海医師の偉そうな指示が飛んだ。私はまだ快感の余韻が冷めないでいる。
すするような呼吸でまわりを窺うと、彼らの手にはスポイトと試験管が備わっていた。
ひとつは私の涙を、ひとつは私の唾液を、ひとつは私の汗を、そして膣から分泌された大量の体液を、そして──。
「小村さん、母乳が出てますよ、ほら」
佐倉さんの言うとおりの部分を確かめてみると、そこには乳白色の液体が滲み出していたのだった。これもまた例のアプリケーションの産物なのだろうか。
「僕がチェックしてみましょう」
そう言って出海医師は私に寄り添ってマスクをずらし、私の母乳を吸った。
この人、こんな顔をしていたんだ。こんなところで出会っていなければ、もっと別なタイミングでこの人と出会っていたら私は──。
曲がった性癖の持ち主だと思っていた彼の素顔に対して、私は好感を抱いていた。しかもこんな距離で体を抱かれ、母乳を舐められ、紳士的な手つきは私の股間をまさぐっている。
「少し中を調べますよ」
彼の太い指が私の体内に進んでくる。
「あっ、あうぅふぅん、ううっ……」
関節が曲がって、指先がとどいて、粘膜をやさしく触診していく。
「中の状態は正常ですね。感度もいいし、愛液の分泌量もじゅうぶんありますよ」
丁寧な口調と、丁寧な愛撫。それだけで気が遠くなりそうになった。
「出産の時はほんとうに大変ですから、今のうちから性器をほぐしておきましょうか」
そして彼の指が2本になり、3本になり、私の膣の中と外を行ったり来たりする。
「あいぃ……、きもち……いいです……せんせい……」
「もっと欲しいですか?」
「ああ……、もっと……して……ください……」
「入れますよ」
「あっ、あそこ……に……入れてください……いっ……」
私の変化に気づいた彼は穴の大きさを目視で確認し、そこへ向かって4本目の指を挿入させてきた。
「あっ!」
はちきれんばかりに広がる膣。彼の親指以外のひとつひとつが別の動きで私を翻弄し、手首をぐるりと返せば手刀は水平に、逆に戻せば垂直に、女性器のかたちを簡単に変えてしまう。
これももちろん治療としての行為なのだから、私は喜んで受け入れた。
彼はいちど私の膣から手刀を引き抜いて、「自分でご覧になってみて、いかがですか?」とそれを私の顔に近づけた。
彼の手はどろどろだった。たっぷりのローションに手を浸したのかと思うほど、糸を引いた指のあいだも手のひらも、私のせいで紅くふやけていた。
「恥ずかしい……です」
私は口を半開きにさせてそう言った。
「じゃあ、もう少し拡張を進めましょう」
またしても彼の指は私の貞操をもごもごと破って、「いきますよ」と5本目の指を割り込ませてきた。
「いんん……、んっ……ふぃん……」
それはもう指ではなく手が突っ込まれた状況と言える、なんとも汚らしくて感動的な光景だった。
尿道から勢いよくおしっこが漏れ、膀胱が空っぽになると膣の奥からも粘液と酸っぱい汁が飛び散って匂いを出す。
さすがに全部の指は無理だろう、子どもを産める体だからといっても限界はあるはずだと、私は彼を受け入れながらそう思った。
それなのに……、それなのに……。
「小村奈保子さん、すごいことになってますよ、ほら、あなたのここ、僕の手が半分くらい入ってしまいました。わかりますか?」
はい、わかります、と私は下唇を噛んで眉間を寄せた。妊婦でもないというのに下半身がどんどん窮屈になっていく感じが、私の子宮に近づいてくるのがわかった。
頭の中が真っ白というよりも、真っ赤になっているという感覚。体が熱くてたまらない。
そして彼の太い腕の筋肉がむくむくと盛り上がった瞬間、味わったことのない性的なストレスが下腹に襲いかかってきた。
「んぐぃ……い……、いっくっ……ふっ……」
成人男性の握り拳がいま、私の膣に詰め込まれた。ずっしりと重たい快感、もうそれしか言えない。
「それでいいんです、力の抜き方がすごくいいですよ。これを何度かくり返せば、出産時の会陰切開を回避できるかも知れません」
「せんせい……、せんせい……」
「うん、どうしました?」
「はぁ……はぁはぁ……、私……妊娠できます……か?」
「もちろんです。今あなたの子宮を触っているかぎりでは、どこも問題なさそうですから」
出海医師はそう言いながら拳をぐりぐりと動かし、子宮口や膣壁の粘膜を細かく調べている様子だ。
私の中に溜まった汁をびちゃびちゃと外に撒き散らし、クリトリスにも興味の意思を示してやさしく撫でてくれる。
乳頭から滲む母乳を吸い取ることも忘れない。
「おっぱいが梅肉なら、あそこは桜肉みたいで、とても美味しそう」
つねに冷静だった佐倉麻衣さんが私の有り様を見て、興奮気味にそう言った。
ジェラシーに似たものを瞳に浮かべ、ここにいる誰よりも私のことを色目で見つめている。
「妊娠しているとわかっていても、我慢できないものは我慢できない。だって……、女だもの」
美麗そのものの顔を紅く火照らせた彼女が手に取ったもの、それがコンドームであることはすぐにわかった。
そして「お願い……」と私に懇願し、それを私に握らせた。
「これを指にはめて……、私を慰めてください」
彼女が何を言っているのかはすぐに理解できた。私は出海医師の拳を子宮に実感したまま、人差し指と中指と薬指をまっすぐそろえ、そこにコンドームを被せていった。
白いストッキングとマタニティショーツを下ろし、両脚を肩幅ぐらいにひらく、彼女の準備はそれだけだ。
私は彼女のスカートの中を3本の指で撫でまわし、確かな手応えを感じる部分で手を休める。
「はっ……はふっ……」
熱いものを口に含んで火傷したように、佐倉麻衣さんは息を引きつらせた。
そこにはもう粘液の膜ができあがっていて、私の指は彼女の性器の表面をスリップばかりしている。ハイドロプレーニング現象──まさしくそんな状態。
佐倉さん、失礼なことしますけど、いきますよ。
私は心の中で一言ことわったあと、禁じられた遊びに手を染めようとしている自分に酔いながら、妊婦の膣をまさぐった。
「あうぅ……、あっ……あぅ……ぅん」
彼女が喘ぐ。
「んいぃ……いぃ……、あっ……っふぅ」
私も喘ぐ。
それもそのはず。私が彼女の芯をいたずらに責めれば、出海医師のごつごつした拳が的確に私の急所を突き上げるのだから。
3人それぞれの体温がひとつに繋がって、喰うか喰われるかというハイペースで抜いては入れ、入れては抜く。
世の中にはまだまだ私の知らない快楽が埋もれていて、それを見つけられないまま女を終えてしまうことだってあるだろう。
でも私は見つけることが出来たのだ。今この瞬間こそが女性としての絶頂期であって、生きる喜びを感じられる営みなのだ。
そう思うとまた無性にセックスがしたくなる自分が、いやらしい動物でしかないと思い込み、その熱烈な愛撫に溺れる体を力ませるのだった。
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