緩急を繰り返す雨音しか聞こえなくなった。オヤジはもう消えたのかも知れない。その証拠に、私の傍らには棄てられたビニール傘。私はそのまま仰向けになり、道の真ん中に寝転がってみた。本当にここは道の真ん中なんだろうか。お尻や背中に感じるアスファルトの固さは、現実なんだろうか。全身を叩く雨が気持ち良くて、さっきまで我慢していた疼きが、堰を切ったかのように甦って来た。
もし誰か来たら……。ううん、誰も来やしないし、たとえ誰か通り掛かったって、私みたいな貧相な体、誰も見ない。ゴミが落ちてるとしか思わない。きっと。
歪にへし折れた傘を手に取り、白いプラスチックの柄を股の間に圧し当てる。
「うぅ……」
いいんだ。どうなったって。台風なんだから、狂ったって。
「ん……ああぁっ!」
街灯が消えた。と、思ったら、それは人の影だった。
「んふっ……アハ……アハッ、アハハハハッ」
ひゅーひゅーごうごう、私の止まらない笑い声すらも、吹き飛ばして行った。
ひとまず『完』
長くてすいません。
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