その後俺は全然あの店に行かなかった。中谷はよく行ってるらしく「坂本、女将がお前連れて来いってよく言ってくるんだけど、お前女将と何かあったの?」「いや…別に」「そうか…でもあの女将お前の事、気に入ってるみたいだぞ…よくお前の事聞かれんだよな」「へぇ…中谷お前そんなにしょっちゅう行ってて、かみさん文句言わねぇの?」と話題を逸らした。詮索されたくなかった。…「待ってるから」と手を振る姿が、頭から離れなれずモヤモヤがまた大きくなった。…何故行きたくないのかは分かっている。…中学時代の事だった。9月に秋祭りがありその前日の土曜日、俺の下駄箱に手紙があった。裏に3-Bイニシャル〝E〟と書かれていた。俺はすぐに解った。Eが付くのは恵理だけだった。手紙の内容は[明日の秋祭り一緒行きませんか?6時に神社にある公園で待ってます]と震えた文字で書かれていた。俺は飛び上がる程嬉しかった。だが行かなかった…いや…行けなかった。当日の午後、入院していた大好きな祖母が危篤状態になった為、家族全員で病院に行ったのだ。その日の午後10時過ぎに他界した。
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