その女の子を見た瞬間完全に思い出した。その女の子は中学時代の初恋の女の子にそっくりだった。俺は固まった。…女将の手の傷は中学時代、理科の実験中に俺が誤って付けてしまった物だった。マグネシウムの燃焼実験で、塊がバチッと跳ね驚きそれを避けた時、後ろに居た女将にぶつかり、転んだ時にビーカーが割れて、女将の手に消える事のない傷を作ってしまったのだった。その後大騒ぎになり救急車が来て、女将は病院に行き5針縫った。幸い右手の腱に異常はなく、包帯等も取れた。だが傷は残ってしまった。…全てを思い出した俺は呑むを止め店を出た。恵理(女将)が見送りに出てきた。「坂本さんまた来てね」「じゃあな恵理」と名前を言うとえっ!?と言う顔をして、すぐ笑顔になり「またね亮太君…待ってるから」と言って手を振った。…家に帰り部屋でぼーっとして恵理の事を思い出し「またねっか」と1人呟いた。そして同じ相手に二回も恋をしている自分に可笑しくなった。
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