文化祭でやるお化け屋敷についての話し合い。
黒板にそう書いてある。
なにそれ・・?
興味ない・・。
だってお化けなんてこの世にいないのに。
なんでそんな物やるのかさっぱりわからない。
お化け屋敷なんてものを発明した人間は実にクレイジーだ。
まったく・・。
「美月くん、どしたの?」
「うん!?・・あ、うん」
ボーってしてしまっていた・・・憂鬱だ。
お化け屋敷・・。
まぁ驚かす側だからまだ気分はいいけど。
怖いなぁ・・お化け。
休み時間。
美空が僕の所にやってきた・・。
「美月、話しがある」
「うん・・」
美空は真剣な顔だ。
何を話すかは・・分かる。とてもとても深刻そうだ。
屋上に来た。
ここなら誰も来ないだろう・・。
美空は振り返って僕をジッと見た。
近寄って僕に抱きついてきた。
肩を震わせている。
ギュッと僕のシャツを掴んで言った。
「美月、文化祭休もう」
「うん・・僕もそれ考えてた」
「お化け屋敷なんて嫌・・準備するのも怖い・・」
「うん・・僕も・・」
さっきの話し合いで分かった・・。
やっぱりやだ・・お化け屋敷・・。
売店の自販機でジュースを買ってベンチに座った・・美空と並んで座る。
「で・・どうする?」
「文化祭・・今年は揚げパン作るクラスがあるんだってさ」
「っ!?休めないじゃない!」
「うん・・休んだらカリカリサクサクの揚げパンが食べられない・・」
美空はうつ向いてしまった・・。
本当に深刻な問題だ。
お化け屋敷・・今からでも変更できないかな。
「みんなの気持ちが変わるような・・そんな事が起これば」
美空は腕を組んで考えている。
お化け屋敷以外ならなんでもいい。
食べ物屋に変更できたら最高なのになぁ。
カレーライスとか食べたいなぁ。
「美月、カレーライスは3年生がやるよ」
「そっか・・じゃあ豚汁とかは?」
「豚汁より甘い物のがいい・・って、論点ずれてるよ・・」
美空が頬っぺをつねってきた。
暴力天使め。
チャイムがなったので教室に戻った。
ひじょーに深刻な状況。
ノートを書く気すら起きない。
今回お化け屋敷の製作指揮を取ったのは鈴美ちゃん、鈴風ちゃん・・。
彼女たちはオカルト好きらしい。
困った子だよな・・。
文化祭まであと1ヶ月近くある。
変更するなら今しかない。
しかしどうするかな・・。
鈴風ちゃんは僕の隣。
気持ちを変えさせれば・・・。
「ねぇ、鈴風ちゃんはお化け好きなの?」
「うん、まぁね」
かわいい顔して恐ろしい子・・。
「えと・・お化け屋敷・・」「楽しみだなぁ・・本当に・・美月くんは?」
そんな顔で訪ねられたら・・・。
「うん、楽しみ!」
こう言うしかない・・。
美空が冷めた目で僕を睨む・・そんな目で見るな。
僕は女の子を傷付けたくない。
お昼休みだ。
中庭でいつものようにご飯を食べる。
今日は春巻きか。
美味しそう。
「美空、例の件・・」
「今はまずいでしょ?」
「例の件って言えば大丈夫じゃない?」
「むぅ・・で?」
「僕は重要な人物を忘れてた・・」
美空は首を傾げた。
教室の決定権を握る人物・・・それは。
美空はハッとした。
「その人を落とせば・・」
「そう、変更できるかもしれない・・そして・・」
うまくやれば食べ物屋に変更できる。
美空と拳を合わせた。
決まりだ!。
「ね、ねぇ・・なに・・してるの?」
春が首を傾げている。
「な、なんでもないよ!」
「そう、なんでもないよ!」美空となんとか誤魔化した・・。
放課後。
カバンに教科書を入れて部活の用意をする。
「さて、今日は何作るかなぁ」
結実は呑気だなぁ。
春と部活の話をしている。
「春、ちょっと職員室行くから先に行ってて」
「あ、うん・・」
春はキョトンとして手を振った。
美空と廊下に出た。
「美空・・」
「うん・・」
職員室に向かう。
「どうやって落とす?」
「くすぐり拷問・・それは最終手段・・とりあえず真剣に話してみよう」
「うん・・分かった」
職員室のドアを開ける。
そーっとドアノブを掴んだ・・。
「こらっ!」
怒られた・・?
振り返ると保健室の先生・・・。
「テスト前に職員室に入っちゃダメだよ!」
「あ・・」
だから春はキョトンとしたのか・・。
忘れてた・・。
美空と組み上げた計画がガラガラガッシャンと壊れた・・。
だが僕たちにはまだ計画がたくさんあるのだ。
とりあえず保健室の先生に抱きついた。
「ちょっ!?」
「せんせぇ・・沙弥せんせぇ・・」
保健室の先生の名前。
まだ新任だし若い。
保健室の先生が美人なら病人が増える。
そんな言葉が生まれたのはこの人のせい。
「な、なに?」
「大好き・・」
「は、はぅ・・かわいい」
「大好きだからお願い聞いて?」
沙弥先生の顔がとろんとなる。
美空も内心ニヤッとなった・・。
「いいよ、どうしたの?」
「お化け屋敷変更計画・・手伝って!」
「ほぇ?」
保健室に来た。
沙弥先生はドアを閉めた。僕と美空はベットに座る。「話は分かった・・そんなにお化けが怖いのか・・まぁ私も怖いけど」
沙弥先生がブルッと身を震わせた。
ずいぶん前から知ってたけど沙弥先生は僕たちと同じくらい幽霊が苦手だ。
仲間にしておくとなにかと役にたつかもしれない。
「私もお化け屋敷は反対よ・・協力するわ」
沙弥先生は拳にギュッと力を込めた。
教員は全クラスの催しものを見てまわらないといけない。
もちろん保健室の先生である沙弥先生も。
沙弥先生は棚からお菓子を取り出しお茶をいれた。
僕と美空はそれを受け取った。
「で、どうするの?」
「草野先生が決定件を持っているから・・草野先生の気を変えられれば」
「ふーむ・・」
お化け屋敷をやるのを嫌にすればいい。
そのためには・・。
「お化けを・・見せる?」
美空が呟いた。
そんな事・・できる・・。幻覚装置・・。
あれがあれば。
沙弥先生と協力関係を結んだのはいい収穫。
保健を出て家庭科室に向かう。
「美空・・どうする?」
「弱めに改良するかな・・でも前の家に住まないと」
前の家・・。
ずっと前からまた住みたいと思っていた。
「私もまた住みたいと思ってたよ」
「ま、人目を気にせずにたくさんエッチできるしね」美空は顔を真っ赤にした。「ば、ばかぁ!そんなんじゃない・・」
「うそつき・・隠しても分かるよ」
「う・・う・・」
「ねぇ・・したくない?」
「っ・・知るか・・ばか」
今朝もしたけどやっぱり・・・。
美空に抱きつく。
「学校・・だぞ・・」
「しよ・・」
「だめ・・」
「ねぇ・・」
廊下には誰もいない。
イチャイチャしてても見られなければ・・。
美空は僕をじっと見た。
「家まで我慢して・・」
かわいい・・。
美空・・・。
「分かったよ・・」
美空から離れた。
今はエッチよりお腹が空いたしな・・。
まだ作戦は始まったばかり・・。
お化け屋敷なんか絶対にやらせない・・。
絶対に・・。
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