だんだんと夏が近づいてきて・・・。
いよいよ、水泳の授業。
僕の一番苦手な・・。
水泳・・・・。
男女に別れて水着に着替える。
スクール水着は半ズボンくらいの長さだ。
膝が少し隠れるくらい。
長いタオルを腰に巻いて隠しながらパンツを脱ぐ。
この瞬間が一番恥ずかしいような・・。
「春さんはチンコ大きいかな?」
「や、やめてよっ!」
結実がタオルを脱がそうとしてくる。
これが一番嫌だ・・・。
「美月、手伝えよっ」
「うん?・・・やだ」
「つまんないなぁ・・」
今のうちに水着を・・。
ガシッと後ろで掴まれた。誰?
クラスの子だ・・。
「男だろ?脱げよ」
「や、やだっ・・・」
タオルを掴まれた。
もうだめだ・・・。
「・・やめなよ」
「あん?」
美月くんがクラスの子の手を掴んでる。
「君は春くんの体を見たいの?」
「ち、ちげーよっ!」
「男が裸になるのは好きな人の前だけでいい・・触るんじゃない」
「・・・悪かったよ」
手を離した。
助かった・・・。
「美月くん、ありがとう」
「うん・・でも嫌ならもっと抵抗しなきゃ」
「そうだよね・・」
「君は男の子でしょ?もっと強くならなきゃ」
「うん・・・」
「そんなんじゃ・・好きな人を守れないよ」
「・・・・うん」
僕はもっと強くならなきゃ・・・。
そうだよね・・・。
「何様よ、バカじゃない?」「な、なに?み、み、美空っ?」
美空ちゃんがドアの所にいた。
僕以外は全員着替えている・・・。
僕はささっと水着を着た。「えらそーに・・美月だって弱い所たくさんあるじゃない」
「なんだよ、美空っ!入ってくんなよ!」
「どMの美月に・・もっと強くならなきゃ・・とか言われても説得力ないから」
「ち、ちがっ!違う」
美空ちゃんはニヤニヤ笑ってる。
後ろには女子の集団。
僕はパーカーを着てやっと一息。
美空ちゃんはなんか哀れむような勝ち誇ったような何とも言えない表情でとどめを刺した。
「美月の弱点言ってやろうかなぁ・・・首筋とか」
「や、やめて・・ううっ・・・」
美月くん・・泣いちゃった・・・。
結実が背中を擦っている。「春、行こ!」
「あ、うん・・」
美空ちゃんと教室を出た。美月くん大丈夫かな・・。「春、あいつの言う事は気にしない方がいいよ」
「・・・うん、でも強くならなきゃって・・思う」
「そう思うだけでも十分だよ」
「そっかな・・・」
準備体操が終わったので日陰に座る。
水泳は昔からできない。
プールに入ると翌日ぐらいから高熱が出てしまう。
水泳は苦手だし・・・何より着替える時間が一番苦手だ。
見学でも水着は着なきゃいけないし。
「ふぅ・・」
パーカーを着てるけど少し寒い気もする。
「春も見学か・・」
美空ちゃんが隣に座った。「えと・・美空ちゃんは泳がないの?」
「うん、髪乾かすの時間かかるし・・」
美空ちゃんは髪を撫でながら言った。
光に当たるとキラッと光る銀の髪。
凄く綺麗。
「春はプールに入れないんだっけ?」
「うん、熱が出ちゃうから・・・」
「そっか・・」
みんなが楽しそうに泳いでいる。
ずっと昔から体育は見学するしかできなかった。
「体が弱い男なんて・・格好悪いよね・・」
つい口に出してしまう。
美月くんがはしゃぎながら遊んでる。
いいな・・って思う。
頬っぺたがくすぐったい。なんだろ・・。
美空ちゃんが長い髪の毛先で僕の頬っぺたをくすぐっていた。
「春はそういう子なの、格好いいとか悪いとかそういう問題じゃないの!落ち込まない!」
「あ、うん・・」
美空ちゃんが少しムッとした。
どうも色々ありすぎて落ち込みやすくなってるな。
明るく行こう・・。
「さっき言ってたけど、美月くんの弱点って首筋なの?」
「うん、そう・・舐めるとね・・体がビクビクッて・・・あ・・」
美空ちゃんが顔を赤くしてそっぽを向いた。
僕まで恥ずかしくなる・・・・。
話は聞いてたけど・・やっぱりエッチもしてるのか。「美月くんは・・上手いの?・・その・・」
「しゅ、春っ!そんな話は・・・」
美空ちゃんがあたふたしてる・・・。
可愛いなぁ・・。
美空ちゃん咳払いをして少し落ち着いた。
「春も・・エッチな話には興味あるんだね・・」
「う、うん・・・」
嫌われちゃうな・・。
もうこんな話はよそう。
「ごめんね、別の話・・」
「いいよ、聞きたいなら・・・うん・・聞いていい」美空ちゃんが顔を真っ赤にして体育座りしてる。
男子用のスクール水着を着て上にシャツを着ているのあんまり露出は高くない。けどスッゴいドキドキする・・・。
「えっとね・・・美月は上手いよ・・けど・・最近は・・私のが攻めるかなって思う・・うん・・その・・・・えっと・・」
「あ、あは・・そっか・・」美空ちゃんは頬っぺたを赤くしながら僕を見た。
ムッとしてる。
「春も・・・言ってよ」
「ぼ、僕?」
「したんでしょ?」
「う・・・ん・・」
お互い顔が真っ赤だ。
どうしよう・・・。
こういう会話になるなんて思ってなかった・・。
いい所・・・言えばいいのかな?
「僕は・・その・・・唇が・・柔らかいって・・言われたよっ!」
「ははっ、それだけ?」
「ごめん、限界・・・」
「うん、いいよ・・私もここが限界だよ・・」
なんともぎこちない会話が終わった。
美月くんはバシャバシャと泳いでいる。
水泳得意なんだな・・。
「調子にのってる・・」
美空ちゃんがあきれた顔をしている。
「美月くんといると幸せ?」美空ちゃんは少しキョトンとした。
それも可愛くて見とれてしまうけど。
ちゃんと顔を見れない。
ドキドキしてどうしようもなくなる。
「うんっ・・幸せ・・大好きだし美月のためなら何でもする・・美月のためなら・・何だって・・やるよ」その目は綺麗で。
こうやって僕と話している間も美月くんを見ている。本当に本当に大好きなんだなって・・。
分かってしまう。
「でもね・・・」
美空ちゃんが僕を見て。
「春と一緒にいるのも幸せなんだよ・・」
そう言って微笑んだ。
友達として仲良くても。
それ以上にはなれない。
どこかで・・一歩踏みでないと・・。
でもその言葉は素直に嬉しかった。
ガンッ。
美空ちゃんの頭にゴムボールが当たった。
「美空っ!パスして」
美空ちゃんが笑いながら。頬を引きつらせた。
怒ってる・・・。
「美空ーっ、早くー」
美月くんが手を振っている・・。
美空ちゃんがボールを掴んでおもいっきり美月くんにぶん投げた。
「はは・・やっぱあいつ空気読めないな・・」
「美空ちゃん、ナイスパス・・・」
スッゴい早かった・・。
授業が終わって教室に戻る
美月くんの弱点か・・。
首筋・・・。
着替えて制服を着る。
何もされなくてホッとした
女子も教室に入ってきた。美空ちゃんが隣に座った。「次の授業は・・国語か」
「春、手の調子はどう?」
「うん、まぁまぁかな・・」「そっか、良かった」
美空ちゃんが髪をブラシで撫でている。
「美空っ!」
美月くんが後ろから美空ちゃんに抱きついた。
「うっざい!」
美空ちゃんはムッとしている。
「ねぇねぇ、今日のお昼何食べる?」
「美月と一緒なやつでいいよ」
「えーっ、それじゃあつまんないよーっ」
「むぅ・・・」
僕はそんな二人眺めて羨ましいなって思う・・。
お邪魔かな・・。
席を立って教室を出ようとドアの方に向かおうとした・・・。
二人の様子を睨み付けている女の子がいた。
胸ポケットに手を入れた。
鉄砲?
女の子の目線の先には二人・・。
まずい!
僕はとっさに二人に覆い被さった。
バシッバシッバシッ!
「イタッ!」
背中に激痛。
本物じゃないみたい・・。
振り返って女の子を睨む。女の子はうろたえている。僕は女の子に近づく。
「ひっ!」
女の子は僕に鉄砲を向けた目をつむる。
バシッバシッ。
「・・っ・・!」
顔に当たった。
なんとか近づいて女の子の鉄砲を取り上げた。
「わ、私は悪くない!」
女の子がそう叫んだ。
「そんな事しちゃダメ・・傷つけたって何にもならないよ」
ぶん殴りたい。
けど抑える。
そんな事しても解決にはならない。
「あ、あの・・」
「君は・・美月くんが好きなんでしょ?」
女の子が黙った。
「こんな方法良くないよ・・・」
女の子が泣き出した。
周りが騒然としている。
女の子は泣き崩れてしゃがんでしまった。
「ごめんなさい・・ごめんなさい・・」
そう言って泣いている。
僕は背中をさすってあげる「美月くんと美空ちゃんに謝ろうね・・大丈夫だよ」きっと想いが募ってしてしまったんだろう。
「春・・・大丈夫?」
美空ちゃんが寄ってきた。「美空ちゃん・・先生呼んできて・・お願い」
「・・うん」
美空ちゃんは職員室に向かった。
「春くん、血が・・」
「美月くんはジュース買ってきてくれない?後でお金払うから・・」
「・・わ、分かった・・」
僕の事なんてどうでもいい・・・。
今一番辛いのはこの女の子なんだから・・。
ハンカチで涙を拭いてあげた。
可愛らしいか子だ。 「可愛い顔してるんだから謝って仲良くなればきっと美月くんも振り向いてくれるよ・・大丈夫・・」
「うん・・」
美月くんと美空ちゃんがちょうど同じタイミングで走ってきた。
草野先生もやって来た。
美月くんからジュースを受けとる。
「ありがと・・」
ゆっくりと女の子を立ち上がらせる。
「ジュース飲めば落ち着くよ・・ゆっくり歩こう」
女の子は泣きながらゆっくり歩いた。
野次馬がガヤガヤ言ってる「美月くんのストーカー?」「退学になるんじゃね?」
「うっわ・・マジ頭おかしいんじゃね?」
そんな言葉に・・イライラした。
スッゴく・・。
「黙れ!」
叫んでしまった・・・。
今までに出した事ないくらい大声で。
野次馬が静かになった。
女の子を職員室に連れていく。
職員室についてやっと一息つけたと思ったけど・・。緊張が緩んだのか苦しくなってきた。
「はぁ・・・しんどい」
「春・・・」
「大丈夫・・大丈夫だから」女の子のそばにいてあげよう。
今はそうしてあげよう。
女の子は椅子に座った。
「なんでこんな事したんだ!?」
草野先生が怒鳴った。
女の子がビクッと震えた。「先生、まずはジュースを飲ませてあげて下さい」
「あ、ああ・・」
女の子はジュースを飲んで少し落ち着いたようだ。
僕が付き添ってゆっくり話しかけてあげた。
やっぱり理由は僕の思ったとうりだった。
厳重注意でなんとかなった・・・。
良かった・・。
緊張がとけてもう体に力が入らない・・。
その場にへたりこむ。
「榊くん、君は立派だな・・・」
草野先生が起こしてくれたとりあえず椅子に座った。「いいえ・・そんな事・・」「歩けるか?」
「はい・・」
職員室を出ると美空ちゃんと美月くんが待っていた。「春・・・ごめん」
「いいよ・・」
美月くんが凄く申し訳なさそうな顔をしている。
「美月くん、周りの女の子に優しくしずぎるのも良くないよ。」
「あ、うんっ・・ごめん」
うつ向いてしまった。 「僕は・・保健室行ってくるよ・・痛いや」
フラフラしながら歩く。
緊張しすぎて筋肉が強ばったせいか節々がズキズキする。
「春、私も・・」
「大丈夫・・すぐ戻る」
美空ちゃんを止めた。
二人は先に教室に帰った。
僕は一人で保健室に向かう顔の傷・・少し血が出てるな・・。
腫れちゃうかな・・。
僕のやった事・・。
正しかったかな・・。
※元投稿はこちら >>