車が止まってドアが開いた
外に投げ出された。
「春、さよなら」
お姉ちゃんだった人がそう言ってドアをしめた。
車が走って行った。
ここは・・・どこ?
大林神社・・・。
這いずる。
歩けない・・。
携帯が鳴った。
出れない・・。
這いずる・・。
僕は神社に入っていいのかな?
「春くん!」
利奈さんが駆け寄ってきた・・・。
「春く・・ん・・何されたの?」
分からない・・酷い事。
気が遠くなって・・。
目を閉じた。
お母さんはどんな人?
お父さんはどんな人?
僕は何で生まれたの?
僕は生きてていいの?
目が覚めた。
布団・・・。
僕の部屋?
「春くん・・」
「利奈さん・・お姉ちゃんなの?」
利奈さんは凄く驚いた。
そして頷いた。
体が痛い・・・。
「傷は大した事ないよ・・大丈夫・・」
「僕は近親相姦で生まれた子供なの?」
「・・・・っ」
利奈さんは僕を抱き締めた「どうなの?」
「・・・うん」
「そっか・・・」
いらなくて・・生きてちゃいけない子か・・。
しばらく寝てた。
何も考えたくなくて。
酷い事された・・・。
たくさん犯された。
苦しくなる・・・。
「はぁ・・はぁ・・苦しい・・苦しいよ」
襖が開いた。
美空ちゃん・・・。
「春・・」
「美空ちゃん・・苦しいよ・・・助けて・・ころしてよ」
「春っ!」
僕の手を握ってくれた。
「だめっ・・だめだよ」
泣いてる・・・。
美空ちゃんを泣かせちゃった・・・。
「春・・一緒にいるから・・・・」
好きな人に手を握ってもらった。
胸の痛みが和らぐ。
美空ちゃんがずっと側にいてくれた。
利奈さんも側にいた。
僕はしばらき動けなかった・・学校も休んだ。
やっと歩けるようになって居間に向かう。
美空ちゃんが隣で支えてくれる。
「春・・・」
「うん・・大丈夫」
居間に入ると美月くんがいた。
美空ちゃんの好きな人。
凄く綺麗でカッコいい。
僕なんかが敵う相手じゃない。
ゆっくり座る。
「朝ご飯食べる?」
「うん・・」
美空ちゃんが台所に行った美月くんは僕を見た。
カッコいいな・・。
「えっと・・春くん」
「はい・・」
「僕は美月って言います・・・初めまして」
「初めまして・・」
女の子みたいなのは僕と一緒だな。
けどどこか大人っぽい。
美空ちゃんがお粥を持ってきてくれた。
「春、食べれる?」
「うん・・」
ゆっくりスプーンですくって食べる。
美味しいな・・。
「美味しい?」
「うん・・・」
美空ちゃんが微笑んでくれた。
やっぱり・・好き。
諦められない。
でも美空ちゃんは美月くんが好きだから・・。
「美空・・どうする?帰る?」
帰るんだ・・・。
行って欲しくないな・・。嫌だな・・・。
「綾も待ってるよ・・・」
美空ちゃんは美月くんを凄い目で睨んだ。
「帰れる訳ないでしょ!?どんだけバカなのよ!!」
「美空ちゃん・・帰りなよ」「春・・・?」
「好きな人のそばにいた方がいいよ・・美月くんと一緒にいた方が幸せだよ」
「・・・・っ!」
フワッと。
美空ちゃんが抱きついてきた。
いいにおい・・。
「春も・・ばかっ・・・」
「僕は大丈夫・・」
「ばか!大丈夫じゃない!」
「でも美空ちゃんは美月くんのそばにいたいんでしょ?」
「・・・・うん」
僕のせいで美空ちゃんが悩んでる。
僕はいらない人間だから迷惑かけちゃダメなんだ。
「美月くん、しばらくここにいなさい!」
利奈さんが怒鳴った。
いつの間に・・・。
「えと・・・」
「美月くんがいれば美空ちゃんも帰らなくていい!それでいいじゃない!」
美月くんは少し黙った。
僕をチラッと見た。
「わ、分かった・・・」
「言っとくけど美空ちゃんと美月くんの秘密は全部知ってるからね!遠慮はいらないよ!」
「えっ!?」
秘密・・・?
美月くんは美空ちゃんを見た。
しばらく見つめ合って頷いた。
「じゃあよろしくね、利奈、春くん」
礼儀正しいなぁ・・。
なんか憧れちゃう。
「でも・・春くんは嫌じゃない?」
「なんで・・・?」
「えっと・・僕がいて嫌じゃない?」
「うーん・・少し・・気になっちゃうかな・・」
いくら僕でもそこは少し気になる。
どうしよう・・・。
美空ちゃんがさらにギュッとしてきた。
「美月はいるだけでいい・・・大丈夫・・春の側を離れたりしないから」
「うんっ・・」
美月くんが少しくやしそうな顔をした。
「美月は少し修行!」
「むぅ・・・」
「黙れっ!ケーキ全部食べたくせにっ!」
「・・・・うん」
なんだか騒がしくなりそうだな。
利奈さんに話を聞いた。
お姉ちゃんの言った事は全部事実らしい。
「じゃあ・・僕は・・」
「お母さんとお母さんのお兄さんの子供って事になるね・・」
「そうなんですか・・」
生きてていいのかな?
どうなの?
分からない・・。
「春は・・料理ができるからいいんだよ!」
「えっ?美空ちゃん?」
「生きてて悪い訳ない・・春は生きなきゃだめ!」
美空ちゃんが手を握ってくれた。
ドキドキしてしまう。
「春はいい子・・だから死んじゃダメ」
「うん・・」
「絶対・・ダメ」
「うんっ・・」
また抱き締めてくれた。
ドキドキが・・凄い。
「美空・・あんまりイチャイチャするなよ」
「うっさい!」
美空ちゃんが舌をべって出した。
可愛い・・。
しばらくして久しぶりに登校する。
美空ちゃんと一緒に。
「良かったね、治って」
「うん・・ありがと」
「いいよっ・・そんな」
美空ちゃんは顔を赤くしてそっぽを向いた。
最近こんなんばっかりだ。クラスに入ると結実と山田さんが真っ先に僕の所に来た。
「春さん、大丈夫?」
「うん・・大丈夫・・」
「榊くん、元気そうで良かったよ・・ホッとした」
「ありがと・・」
席について一息。
久しぶりに座る席だ。
隣には美空ちゃんがいる。「なぁ春さん、転校生が来るらしいぜ」
「えっ?そうなんだ・・どんな子かな?」
転校生か・・仲良くなれるといいなぁ。
「まさか・・ね・・」
「美空ちゃん?」
「うん?・・なんでもないよ」
チャイムが鳴って先生が来た。
「えっと転校生なんですが・・・この学校の卒業生でもう一度入学したいとの事です・・・入ってきていいよ」
ドアが開いた。
女子生徒が見とれてる。
美月くん!?
「えーっと・・美月ですっ!よろしくね!」
スッゴいかわいい笑顔。
男の子も見とれてる。
「ふ、ふざけんな!」
美空ちゃんが立ち上がって美月くんを指差した。
「なんでよ!バカじゃないの!?」
「えーっ・・いいじゃん」
美月くんはムスッとした。草野先生は咳払いをして美月くんの頭を撫でた。
「えと、美空ちゃんのお兄さんですね・・はい・・ケンカはやめましょう」
美空ちゃんはワナワナしてまた座った。
美月くんはカバンを持って僕の隣の席に座った。
生徒が少ないから机は結構空いている。
「隣だね、よろしく!春くん・・美空も」
「あ、うんっ!」
美空ちゃんは美月くんを睨んでいる。
「・・・・っ!春、相手しちゃダメだよ」
「春くん、美空はうるさいでしょ?」
「だまれっ!ばかっ!」
美空ちゃんの怒った顔も可愛いなぁ・・。
美空ちゃんはチラッと僕を見た。
「春も・・ばかっ・・」
「えっ・・?」
「なんでもないっ・・」
なんだか学校も騒がしくなりそう。
結実は美月くんとすぐに馴染んだみたい。
放課後に家庭科室に向かう美月くんもついてきた。
その後ろに女子生徒がついてくる。
「なんで・・来るの?」
「美空が心配なんだよ」
「ばか・・」
美月くんは何が心配なんだろう。
美空ちゃんは凄く美月くんを好きなのに。
一体何が・・・?
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