炊飯器をいよいよ開ける時・・・。
四人でじっと見つめる。
「・・いい?開けるよっ」
僕は炊飯器を開けた。
ふわっと湯気があがる。
その瞬間いい香りが広がる「おおっ!」
結実が声を上げた。
とってもいい出来だ。
竹のお皿に盛り付ける。
いい・・凄くいい!
他にも筍の煮物なども作ってみた。
「草野先生まだ?」
顧問は草野先生になった。野球部と掛け持ちらしい。草野先生がデジカメを持ってきた。
「お待たせー・・おおっ!いいね」
竹のお皿はかなりいい雰囲気だ。
笹の葉っぱも引いてある。草野先生がデジカメでパシャッと撮影した。
料理研究部の初めての料理だ。
これは掲示板に写真と一緒にレポートを書いて貼る予定だ。
草野先生は何枚か写真を撮ってから微笑んだ。
「うまそーだな!」
僕はお箸とかを用意する。みんなの分を用意して椅子に座った。
「では・・いただきますっ」みんなが続いて手を合わせていただきますを言った。まずは筍ご飯から・・。
完璧だ・・とっても美味しい。
「うわぁ・・美味い!」
結実が微笑んでいる。
料理を作ってこの時が一番幸せ。
美味しくて笑ってくれる人の顔を見る時。
山田さんは次々に口に運んでいる。
「凄いね・・」
山田さんはそう言って僕を見た。
「あはは、みんなで作ったから美味しいんだよ」
「ふむん・・いいね、料理」次は煮物を食べている。
結構大食いなんだな。
美空ちゃんは一口食べて微笑んだ。
「美味しい・・」
その微笑みに見とれる。
美空ちゃんは僕を見て笑った。 「春ももっと食べなよ」
「あ、うん・・」
筍ご飯には筍、人参、油揚げを入れた。
口に入れるといい香りが口の中に広がる。
たまらずにもう一口食べてしまう。
僕と美空ちゃんで結構工夫して行程を考えた。
煮物もいい。
大きめに切った筍をガブッとかぶりつく。
出汁がたくさん染み込んだ筍は柔らかくて食べやすい
みんな満面の笑みだ。
草野先生も食べて美味しそうに笑った。
みんなで後片付けをしてレポートを書く。
マジックで料理の感想を書いていく。
「ほとんど春さんと美空ちゃんが作ったよな」
結実がボソッと言った。 「そんな事ないよ、みんなで作ったんだよ」
「そっか・・そうだよな!」結実も興味出てきたみたいだな。
山田さんは綺麗な字で物凄く細かく感想を書いている「山田さん、たくさん書くね」
「うん、それぐらい美味しかった」
「ははっ、そうだよね!」
レポートをみんなで書いて職員室前の掲示板に貼った
みんなで眺める。
「なんとも言えない達成感だなぁー」
結実がレポートを見ながら言った。
これをみんなが見てくれればなぁ・・。
後片付けをして帰る準備をした。
もうすっかり夕方。
結実と山田さんは家族に食べさせるために持って帰るみたいだ。
僕も少し残ったのをタッパに入れよう。
利奈さんと将さんにも食べさせてあげるんだ。
美空ちゃんが待っている。家庭科室の電気を消した。「お待たせ」
「うん、帰ろ」
二人で暗い廊下を歩く。
タッパには煮物と筍ご飯が入ってる。
「今日は良かったね」
「うん、楽しかった」
自然と笑っちゃう。
こんなに楽しいのは初めてだった。
「春・・良く笑うようになったね」
「あは・・そっかな?」
学校からの帰り道。
二人で並んで歩く。
「ねぇ・・買い食いしない?」
「美空ちゃんは腹ペコだね、いいよ」
「あはっ、行こっ!」
無邪気に笑う。
好き・・・。
美空ちゃん・・。
商店街でケーキ屋に入ったまさかケーキが来るとは思わなかった。
店員さんとは顔馴染みになった。
「あは・・ケーキか」
「春はどれにする?」
「うーん・・と・・・・フルーツケーキにしよっかな・・」
「じゃあフルーツケーキ1ホール!」
「・・・へっ?」
美空ちゃんはまだ選んでる「あとチーズケーキとチョコレートケーキも!」
「あわわ・・美空ちゃん」
「春も食べるでしょ?」
スッゴい笑顔・・・。
可愛い・・・。
「うん、明日は休みだし・・・たくさん食べるよ」
「よしっ!」
美空ちゃんはお金を払った
二人でケーキを持って家に向かう。
目立つなぁ・・。
「春はケーキ好き?」
「うん、甘い物は結構好き」「そっか、コーヒーと一緒に食べるといいよ」
「うん・・ニキビできないかなぁ・・」
「大丈夫だよ、春はできないよ」
「そっかなぁ・・」
もうすぐ神社につく。
利奈さんは苦笑しちゃうだろうなぁ。
美空ちゃんが駆け足で鳥居をくぐった。
急に立ち止まった。
「・・み・・つき・・」
「へっ?」
「美月っ!」
ずっと向こうに立っている少年。
僕と同じくらいの子。
凄く凄く綺麗な・・。
銀髪の美少年・・・。
青い瞳・・美空ちゃんのお兄ちゃん?
美空ちゃんが駆け出す。
「美空っ!」
美月くんも駆け出す。
あぁ・・僕の想いも届かなかったなぁ。
もう終わりか・・。
二人の距離が近づいて。
美空ちゃんが・・。
ケーキを投げつけた。
「ぐはっ!」
美月くんの顔に命中した。
ポカーンとする。
大丈夫・・かな?
結構吹っ飛んだ・・。
「はは・・美空ちゃんスッゴい怒ってる・・」
「利奈さん・・」
「や、おかえり」
巫女服を着ている。
美空ちゃんはケーキの箱を拾って中身を確認した。
そして床に置いて美月くんに抱きついた。 「この・・ばかっ!」
「み、美空・・ケーキは?」「無事よ・・」
「迎えに来たよ・・」
「遅いっ・・・」
キスした・・・。
グサグサと心に針が刺さる
見てられない・・・。
僕は後ずさる。
見てられないよ・・・。
駆け出した。
「春くんっ!」
利奈さんが止めたけど足は止まらなかった。
タッパを持ったまま走った・・・たくさん走った。
どこだろう・・ここは。
良く分からない所。
うずくまって泣いた。
好きなのに・・・。
どうすれば・・・。
ベンチに座って涙を拭いた・・・。
「はぁ・・ぐすっ・・」
止まらない物はどうしようもない。
しばらく泣いた。
もう夜か・・・。
せっかく好きになったのになぁ・・・。
車が止まった。
誰かおりてきた。
暗くて良く見えない。
近づいてくる。
誰・・・?
「春、久しぶり」
「おねぇ・・ちゃん」
僕の隣に座った。
何されるの?
怖い・・・怖い。
「何で泣いてるの?」
「・・・・」
「ねぇ・・もしかして失恋?」
「・・・っ!」
「図星だね・・・」
お姉ちゃんは笑った。
僕の肩をガシッと掴んだ。「じゃあ今心が弱ってるんだね・・・くすっ」
「お姉ちゃん・・何でここに?」
「あんたの場所なら分かるよ、発信器つけたから」
「えっ・・!?」
お姉ちゃんは笑ってる。
一番笑わせたい人。
この笑顔は見たくない。
怖い・・怖い・・。
「ねぇ・・春・・あんたは私の弟じゃないよ」
「へっ・・・?」
「お母さんも別の人だよ」
「お姉ちゃん?」
何言ってるの?
「あんたは養子なんだ」
「・・・・別に・・いいよ・・それぐらい」
それで僕を悩まそうと思ったんだろうな。
僕は強くなったんだ。
そんなの言われたって・・・・。
「ははっ、話はこれから」
「・・・何?」
「あんたは近親相姦して生まれた子供なの」
「・・・な・・に?」
僕の顔を見てお姉ちゃんは大笑いした。
「詳しい事はあの神社のお姉ちゃんに聞けば分かるよ、あの人はあんたのお姉ちゃんだよ・・まぁ父親は違うけどね」
「・・・う、うそ・・」
「嘘じゃないよ、本当の事・・・」
お姉ちゃんは僕の持っていたタッパを奪った。
奪い返す事もできない。
「まずそ・・こんな物まだ作ってるの?」
「だめっ!」
お姉ちゃんはタッパを投げ捨てた。
せっかく作ったのに・・。「あんたは生きてるだけで罪なの・・分かる?いけない事をして生まれた子供だから生きてちゃいけないんだよ」
「嘘だ・・うそ・・だ」
顔を打たれた。
平手打ちを何度もされた。「この手紙にそう書いてあるんだよ・・」
手紙を見せられた。
暗くて良く見えない。
けどうっすらと・・・。
親友としてお願い。
この子をお願いします。
私は育てられない。
望んで妊娠した訳じゃないし兄もいらないと言っていたから。
あなたは男の子を欲しがってたでしょ?
あなたにあげます。
嘘・・嘘・・。
「私のお母さんもだいぶ苦労したんだよ・・たくさん苦しんだんだよ」
「ちがぅ・・僕は・・」
「だから私はあんたが嫌いなの、お母さんを苦しませたあんたが大嫌いなの」
「凛ねぇちゃ・・」
しがみつこうとして。
蹴飛ばされた。
床に倒れた。
お姉ちゃん・・違うの?
僕のお姉ちゃんじゃないの?
「もう二度とお姉ちゃんなんて呼ばないで・・腹が立つ・・」
言葉が出ない・・。
力が入らない・・。
「最後の復讐・・忘れられない事してあげる」
僕の襟を掴んで引きずる。車の中に連れ込まれた。
「可愛がってあげなよ」
大人が何人もいる。
女の人も男の人も・・。
みんなニヤニヤしてる。
服を脱がされる・・・。
車が走り出す。
どうなるの・・・・。
僕が・・壊れてく。
ボロボロにされる・・。
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