授業中も必死に黒板を見ながら覚える。
ノートは美空ちゃんが書いてくれている。
元々頭は悪くない。
けど頑張る。
「はい、今日はここまで。8ページを予習しときましょう」
チャイムが鳴って休み時間になった。
「はふ・・覚えれた」
「・・まじ?春さん一発で暗記かよ」
「全部言えるよ」
「俺も頑張らないと・・」
結実も結構頭いいらしい。全国模試で30位ぐらいだって自慢してたな。
「ノート書けたよ」
「ありがと・・・わぁ!」
丁寧に詳しく書いてある。黒板より詳しい事も書いてあるな・・。
「少し付け加えしたよ」
「美空ちゃん凄いなぁ・・」「ははっ、大袈裟だよ」
授業がいくつか終わってお昼休みになった。
今日はお昼を食べたら下校してもいい。
「春さん部活は何にする?」「ぶかつ・・?」
「ばっきゃろ・・中学生になったらまずは部活だろ!」「へぇ・・」
結実はおにぎりにかぶりついた。
おっきなおにぎりだな。
「どんな部活があるのかな?結実は何にするの?」
「俺はモテる部活がいい」
結実はニヤリと笑った。 「へぇ・・・でも結実は何もしなくてもモテそうじゃん」
「春さん・・お前を親友と呼ばせてもらう」
なんか格上げされた。
どうせ今日はお昼で学校が終わるから部活見学でもするかな。
美空ちゃんは静かにサンドイッチを食べている。
「美空ちゃんはどうする?」「私?春が部活するんなら同じ所にする」
「そっか、じゃあ見学しに行こうよ」
「うん、いいよ」
美空ちゃんと一緒にいられる時間が増えて嬉しいな。もっと色んな事をしてみたいな・・。
お昼が終わってから掃除をする。
今日の掃除当番は僕だ。
左手で箒を使ってサッサと掃く。
美空ちゃんは廊下で待ってくれている。
結実は用事があるらしく帰ってしまった。
真面目に見えるけどかなりゲーム好きらしい。
家に帰って通販で頼んだゲームを受け取らないといけないらしい。
人って見掛けによらないもんだな・・。
「ふぅ・・こんなもんかな・・」
箒と塵取りを片付けた。
廊下に出て水飲み場で手を洗う。
「えと・・ハンカチ」
「はい、使って」
「あ、ありがと」
クラスの女の子だ。
名前は何て言ったかな・・「榊くんは掃除をきちんとして偉いね」
「あ、うん・・えっと」
「あは、山田鈴美です」
僕より少し背が高い。
髪の毛は肩くらいまで。
精悍な顔つきだ。
涼しい雰囲気のカッコいい女の子だ。
「春、見学行こ」
美空ちゃんが少しムッとして言った。 「あ、うん・・ありがとう山田さん」
「うん、じゃあね」
手を振って別れた。
「ごめんね、待たせて」
「・・・うん」
「美空ちゃん、怒った?」
「うん?・・・」
美空ちゃんは少しムッとしている。
待たせすぎたかな?
「ううん、怒ってないよ」
そう言って携帯を閉じた。ケンカしてる人とメールしてたのかな?
その人と仲直りできるといいな。
「私は・・好きなのかな?」
美空ちゃんが微かに囁いた「美空ちゃん?何か言った?」
「あ、あ・・なんでもないよ!ほら、行こ!」
美空ちゃんが少し顔を赤くしたのが見えた。
やっぱり怒ったのかな?
怒ると頭に血が昇るって言うし・・。
今度からは待たせないようにしよう。
グラウンドにはサッカー部とか野球部がいる。
腕の事を考えるとスポーツ系は避けたほうがいいな。「春はスポーツは苦手だしやめときなよ」
「うん・・」
僕は体力もないし体も弱いからな・・。
校内に戻って部活を見て回る。
料理研究部は無いみたいだ・・・。
「残念だね・・」
「春、そうでもないよ」
「えっ?」
「部活を作ればいい」
美空ちゃんがクスッと笑って言った。
「なるほど・・けどどうすればいいの?」
「部員は四名必要なんだ・・だから結実も入れるとしたら三人かな」
「結実は入るかな・・?」
「メールしてみるよ」
美空ちゃんが携帯を操作している。
しばらくして美空ちゃんが微笑んだ。
「喜んで入るってさ!」
「そっか、じゃああと一人だね」
部活の事を相談しながら見学は終わってしまった。
学校を全部まわって職員室についた。
「先生に相談してみる?」
美空ちゃんが僕を見た。
目が合ってドキッとした。「あ、う、うん・・」
「春は私を見るとそんなにドキドキする?」
「うん・・」
「ふーん・・そっか」
美空ちゃんとかなり喋るようになったけどなかなか慣れないな。
職員室に入る。
さっきの女の子がいた。
「山田さん?」
「あ、榊くんと美空ちゃん」こっちを見て軽く敬礼みたいなポーズをした。
「どしたの?」
山田さんは困った顔をした「いや・・剣道部が無くてさ・・困ってる」
「へぇ・・剣道?」
「親が警察でね、昔から習ってたんだけど・・去年廃部になったんだってさ」
イメージどうりカッコいいなこの人・・。
山田さんは頭をポリポリかいた。
「困ったな・・どうしよう・・他に入りたい部活無いんだよね」
「じゃあ僕たちの部活に入る?」
「ん?なに?」
「料理研究部を作ろうと思うんだけど・・どう?」
「へぇ・・料理・・」
山田さんは少し考えているらしい。
「ふむん・・料理か・・」
「僕、時代劇とか好きだから和食中心でいきたいと思ってるんだ」
「ほぉ・・君も時代劇好きなのか・・よしっ、やる!」やった!決まった。
「美空ちゃん、良かったね」「う、うん・・」
さっそく先生に相談した。家庭科室を使ってもいいとの事。
部費は月に2万円程度らしい。
話が上手く進んで嬉しかった。
「じゃあ楽しみにしとくよ」「うん、またね!」
山田さんと別れて家に向かう。
美空ちゃんは少し口数が少なくなった。
「美空ちゃん、最初はどんな料理作る?」
「うーん・・鮟鱇鍋」
「へぇ・・鮟鱇は高いよ?」美空ちゃんは立ち止まった「ねぇ、春・・・」
「何?」
「あの女の子にはドキドキしなかったの?」
「う、うん・・女の子とは良く喋る方だしそんなにはドキドキしないかな・・」美空ちゃんどうしたんだろ・・・?
「そっか・・春がドキドキするのは私だけか・・」
微笑んだ。
可愛くて・・・ちゃんと好きって言いたい。
けど言い出せない。
ただ好きなんじゃない。
自分でも分かってる。
「春、鮟鱇鍋は無しね!もっと安くて美味しい物作ろうよ」
「う、うん・・」
付き合いたい・・・。
告白して彼女になって欲しい。
今・・凄く凄く・・好きになってる。
いつか言いたいな・・。
でも美空ちゃんには好きな人がいる・・。
けど諦めたくない。
頑張って・・僕も・・。
「春、頑張ってね」
「えっ!?・・何を?」
美空ちゃんはクスッと笑って答えてくれなかった。
頑張って・・僕を好きになってもらおう。
「買い食いしよっか?」
「美空ちゃんはすぐにお腹すくね」
「ははっ、頭いいからかな」すぐには近づけないけど。ゆっくり・・近づいて。
いつかは手を繋いで歩ければ・・。
幸せだな・・・。
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