料理が好きでずっと前から料理人になるのが夢だった高校は料理学校に行きたいいと思っている。
お店を出して有名になってたくさんの人に美味しいと言ってもらいたい。 僕の夢はそれだった。
今・・不安だ。
腕が使えずにどうすればいいか・・。
どう進もうかな・・。
今日は利奈さんと学校に来た。
制服のサイズを計るため。美空ちゃんもついてきた。「変わらないなぁ・・」
「そだね・・・」
古い学校だ。
外壁も汚れている。
体育館で測定をしてもらう事に。
利奈さんと美空ちゃんは測定している間に学校を見てまわると言っていた。
列に並ぶ。
なんか緊張するなぁ。
「君、そこ男子の所だよ」
なんか頭の良さそうな子に話しかけられた。
「僕は男ですっ!」
「あ・・ごめん」
「むぅ・・」
ムッとする。
「えと・・君はここら辺の子?」
「ううん・・引っ越してきたの」
「へぇ・・なんで?」
「言えないよ・・・」
「そっか・・まぁいいや」
言えない・・・絶対に言えない。
言ったら僕は・・・生きていけない。
「僕は吉村結実ってんだ。よろしく」
「榊春です・・君だって名前女の子みたいじゃん」
「ははっ、そだね!」
もうすぐ僕の番だ緊張するなぁ・・・。
「ねぇ、この学校は僕らが卒業したら取り壊されるらしいよ」
「へぇ・・そうなんだ」
「下級生は入って来ないんだってさ」
結実は少し悲しそうな顔をした。
この田舎にそんなに子供がいるとは思えないし。
やはり学校も生徒がいないとダメなんだ。
いよいよだ。
サイズはササッと図ってもらった。
「ふぅ・・」
ため息をついて学校に向かう。
体育館と校舎の渡り廊下を歩く。
美空ちゃんが手を振っている。
「春、こっち」
「あ、うん・・」
美空ちゃんとお喋りできるだけで幸せだ。
利奈さんは職員室にいるらしい。
「一年生の教室はこっちだよ」
「へぇ・・」
廊下を歩く。
所々に傷がある。
「ここで少し大きな事件があったんだ、その時の銃弾の後・・」
「鉄砲が使われたんだ・・怖いなぁ・・」
鉄砲なんて興味ない。
怖いし・・・。
教室はせまい。
椅子も机もボロボロだ。
「私の席はここだったよ」
「ほぇ・・後ろのかどっこかぁ・・」
美空ちゃんは椅子に座って机を触っている。
窓から校庭が見える。
「隣・・座れば?」
「うん・・」
隣の席に座った。
黒板から一番遠い場所。
目立たないし・・・。
僕にぴったりかな。
「あっ、いたいた!」
利奈さんが教室に入ってきた。
「なつかしい・・」
「利奈はそこの席だよね?」「うん、そうそう」
利奈さんが席に座った。
僕のすぐ隣だ。
「私と美空ちゃん・・全然変わんないよね」
「うん・・大人っぽくないよね」
美空ちゃんはため息をついた。
「二人とも可愛いし人気出そうだよね・・」
「春はまだ子供だから分かんないか・・」
利奈がクスッと笑った。
「そうなの?」
「可愛いだけじゃ・・だめなんだよね・・」
少し暗い顔になった。
「そんな事ない、美空ちゃんは可愛いだけじゃなくて優しいし頭いいし僕は好きだよ・・・・あ・・」
言ってしまった・・。
「ははっ、ありがと!」
美空ちゃんも利奈さんも笑った。
「春は素直だね・・私も春が好きだよ」
「あわ・・わわっ・・僕は・・」
「顔真っ赤だよ」
「ううっ・・」
何か恥ずかしくて。
女の子には免疫があるはずなのに。
好きとか言われた事はあるけど・・。
恥ずかしい・・・。
学校は所々古びている。
家庭科室もあった。
「ねっ、自販機まだあるよ!」
「本当だ・・凄い」
二人ではしゃいでいる。
僕はそれを見ていいなって思った。
僕は友達作れるかな・・。
そんな事を考えて階段に座ってボーッとしていた。
頬っぺたがひんやりした。「はい、ジュース」
「あ、ありがとう・・」
美空ちゃんはやっぱり優しい。
「心配しなくていい・・」
「うん・・そだよね」
「私も学校に行くから」
「うん・・・うん!?」
美空ちゃんは僕を見て笑った。
「右手使えないでしょ?私が春の右手になる」
「えと・・いいの?」
「利奈が許可取ったから」
それでさっき職員室に行ったのか・・。
「えと・・美空ちゃんは高校行かなくていいの?」
「私・・?暇ないし・・今はNASAの仕事やっと終わって休暇中だし」
「・・・なさ?」
「ほら、宇宙の」
「美空ちゃんは天才?」
「うん、そうだよ」
たぶん凄い人だ。
僕より遥かに頭がいい。
利奈さんが戻ってきた。
「購買のパン買ってきたよ」「やってたの?」
「ううん、購買のおばちゃんに頼んで売ってもらったよ」
あんパンとジャムぱん。
どっちも甘いやつだ。
「屋上で食べよっか?」
「そだね」
階段を上がっていく。
利奈さんと美空ちゃんはミニスカートをはいている。ぱんつ・・見えそう。
ダメだ・・嫌われるから・・・だめ・・。
けど見てみたい。
美空ちゃんがスカートをつまんだ。
ひらっと少し捲った。
「わっ・・」
僕を見てクスッと笑った。白だった・・。
遊ばれてる?
屋上についた。
街が見渡せる。
三人で座ってパンにかぶりつく。
「いい風・・気持ちいい」
「うん・・パンツ見えたらどーしよぉー・・」
美空ちゃんが僕をチラッと見た。
「あ、あは・・あはは」
「春くんはエッチな事に興味あるの?」
「えと・・あの」
美空ちゃんはニヤッと笑った。 「春は大人しいからむっつりすけべだね」
「あぅ・・・」
僕の初めてはお姉ちゃんに奪われたから。
もうエッチなんかしたくない・・・・。
パンを食べ終えて寝転がる空は青い。
だんだんと温かくなってきた。
「僕は上手くやってけるかな・・この学校で・・」
ボソッと呟いた。
本音がこぼれた・・・。
「春なら大丈夫・・性格はともかく見た目を有効に使いなよ」
「女の子みたいなのを?むぅ・・有効に?」
「それはいつか分かるよ」
「そうなの?」
「うん・・・」
美空ちゃんは遠くを見ている。
遠くにいる誰かを。
「美月くんぐらい可愛いからきっと人気出るよ!」
「そ、そうなんですか?」
利奈さんに肩をポンポンと叩かれた。
「あのバカは・・調子に乗りすぎだったよ」
「美空ちゃんのお兄さんだっけ?」
「そ・・ただのバカだよ」
「ふーん・・」
美空ちゃんがムスッとしている。
ケンカ中らしいけど。
そんなに怒る事なのかな?
学校の帰りにスーパーに寄った。
この街で一番大きなお店らしい。
洋服を見てまわる。
少しおしゃれしたい。
美空ちゃんが来てから急に意識しはじめた。
なんかカッコいい服がいっぱい・・。
田舎なのに・・。
「やぁ、そこは男物だよ?」綺麗なお姉さんに言われたいい返そうとした。
「雪っ!」
「わ、美空ちゃん!」
美空ちゃんがお姉さんに近寄った。
「久しぶりだね」
「うん、雪・・美月とケンカしちゃった・・だからここに逃げてきた」
「そっか・・大丈夫だよ」
美空ちゃんは友達がたくさんいるんだな。
「雪、いいモデルでしょ?」「うん、愛らしい小動物・・・」
「え・・小動物?」
雪さんが僕に近づく。
「君、いいよ・・イイヨー ・・」
「えと・・僕は・・」
「よろしくね」
「あ、はい・・」
洋服を選ぶのを手伝ってもらった。
雪さんはこのお店を開いて資金を集めているらしい。デザインはすべて自分で作ったとか。
凄いなぁ・・・。
カッコいいシャツを買ってお礼を言った。
利奈さんは晩御飯の食材を選んでいるはず。
僕は服を見ながら少しニヤニヤした。
「春、そんなに嬉しいの?」「うん、カッコよくなるんだ!」
「ははっ、がんばれ」
美空ちゃんは僕の事どう思ってるのかな?
好きって言ってくれたけど・・・。
いや・・会ってからまだ短いんだし・・。
これからだ・・。
これから頑張ってみよう。
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